わが国の加齢黄斑変性(age-related macular degeneration:AMD)は比較的急速に視力低下をきたす「滲出型」が多いが,早期に抗血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)薬による治療を行うことで,大多数の症例において視機能の改善・維持が可能となっている
滲出型AMDは慢性疾患であり,抗VEGF薬による完治は難しく,導入期治療により改善した視機能を維持するためには,継続的な経過観察と治療が必要である
抗VEGF薬の硝子体内投与においては,常に全身および眼局所における合併症のリスクに注意する必要があり,維持期においては,患者の身体的・精神的・経済的負担を考慮しながら,できる限り少ない注射回数で治療を行う
AMDとは,加齢に伴って視機能に最も重要な網膜の中心にあたる黄斑部に変性が生じる疾患である。
多くの欧米諸国において成人の中途失明原因の第1位である。わが国においても急増しており,視覚障害の原因の第4位となっている。50歳以上の一般住民を対象とした久山町研究によると,有病率は1998年の0.9%から2007年には1.3%まで増加しており,有病者数で見ると約10年間で2倍の増加となっている1)。これは,わが国における食生活の欧米化などのライフスタイルの変化や高齢化が要因として考えられる。今後も患者数は増加し続けることが予想されるため,AMDの予防や治療は眼科における最重要課題のひとつである。
また,AMDは,黄斑部の出血や網膜剝離/浮腫などにより比較的急速に視力が低下する「滲出型」と,網膜外層の変性萎縮により緩徐に視力が低下する「萎縮型」に大別されるが,欧米諸国では「萎縮型」が多いのに対して,わが国では「滲出型」が約9割を占める。性別による有病率を見ると,欧米諸国では女性が多いのに対し,わが国では男性のほうが約3倍多いことが報告されている1)。
このように,AMDは人種間において差がみられる疾患であり,治療方法や治療成績など,わが国独自のデータの蓄積が必要不可欠である。
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