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全身性エリテマトーデス治療中に突然の発熱と解熱を繰り返す症例の鑑別法は?

No.4816 (2016年08月13日発行) P.59

森田貴義 (大阪大学大学院医学系研究科呼吸器・免疫 アレルギー内科学)

田中敏郎 (大阪大学大学院医学系研究科抗体医薬臨床 応用学寄附講座教授<br />)

登録日: 2016-08-13

最終更新日: 2016-10-30

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【Q】

全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)にて免疫内科通院中の方を併診している開業医です。SLEに対して維持用量としてプレドニゾロン10mgを内服中ですが,1~2カ月に1回の頻度で突然38℃台の発熱や悪寒を認めるものの,半日で解熱するというエピソードを繰り返しています。免疫内科では発熱の際に血液検査,画像検査が施行されているようですが,原因は判然としません。
感染症を含めて膠原病の病勢がコントロールされている状況下で,突然の発熱と解熱というエピソードは時に経験されることなのでしょうか。
(大阪府 Y)

【A】

基礎疾患の病勢が安定しているような状況で突然の発熱と自然解熱を繰り返すというエピソードは,免疫内科外来で診察をしている中で,SLEに限らず多くの自己免疫疾患患者においてしばしば経験されます。SLEでは,CRP上昇を認めない原疾患に関連する発熱は起こりうると考えられます。しかし,多くの場合,一過性の発熱であり,定期的な通院で臓器障害を含む病勢コントロールがきちんと行われていれば,問題となることは少ないと思われます。
また,ステロイドで治療中の患者において,ステロイドの相対的不足に伴う一過性発熱をしばしば経験することがあります。そのような場合,個々の患者において,ステロイドの服用時間帯,あるいは生活スタイルの中でストレスに応じて十分量投与されているのか,確認が必要な場合があります。さらに,健常者であっても,ストレス性高体温という疾患概念が提唱されています(文献1)。ステロイド投与患者でも,似たような病態が考慮されるかもしれません。
一方で,感染症や病勢が安定しているように見える場合でも,慢性副鼻腔炎,尿路結石に伴う,あるいは膀胱の器質的な異常による尿路感染,膿瘍病変といった,発見されにくい感染症や,原疾患に伴うが気づきにくいレベルでの臓器障害の増悪が発熱の原因となる可能性もあり,注意が必要な場合もあると考えます。さらに,非常に稀ですが,周期性発熱をきたす家族性地中海熱(文献2)を代表とした自己炎症性疾患を合併している可能性もあるかもしれません。もう少し発熱の頻度が高く持続的であれば,悪性腫瘍の合併にも注意が必要かと思われます。
いずれにしても,ご質問のような発熱のエピソードはしばしば経験されますが,その原因は多岐にわたり,患者1人ひとりを十分診察し,その発熱が患者の生活に強く影響を与えるものか,そして予後に影響するようなものかを,それぞれ評価していくことが重要であると考えます。

【文献】


1) Oka T, et al:Biopsychosoc Med. 2007.
[http://bpsmedicine.biomedcentral.com/articles/10.1186/1751-0759-1-11]
2) 矢崎正英:信州医誌. 2007;55(4):173-80.

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