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検診で胆嚢壁肥厚を指摘された患者への検査・治療方針 【胆嚢癌との鑑別が最も重要で,US,EUS,MDCT,MRCPなどが有用】

No.4817 (2016年08月20日発行) P.58

良沢昭銘 (埼玉医科大学国際医療センター消化器内科 教授)

登録日: 2016-08-20

最終更新日: 2018-11-27

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【Q】

検診で胆嚢壁肥厚を指摘された患者に対して行うべき検査と治療方針の立て方について。胆石がある場合とない場合で状況は異なると思いますが,胆石がない患者について,埼玉医科大学・良沢昭銘先生にお願いします。
【質問者】
潟沼朗生:手稲渓仁会病院消化器病センター主任医長

【A】

胆嚢壁肥厚の原因となる疾患・病態として,胆嚢癌,胆嚢腺筋腫症,胆嚢炎,膵・胆管合流異常症に伴う過形成性変化などが挙げられます。これらを鑑別するためには,専門家による腹部超音波検査(ultra sound:US),超音波内視鏡検査(endoscopic ultrasonography:EUS),多列検出器型X線CT(multi detector row computed tomography:MDCT),MR胆管膵管撮影(magnetic resonance cholangiopancreatography:MR
CP),内視鏡的逆行性膵管胆管造影(endoscopic retrograde cholangiopancreatography:ERCP)などの検査が有用です。
USで,正常な胆嚢壁は1層の高エコーあるいは内腔より低高エコーの2層構造を呈します。胆嚢腺筋腫症は胆嚢内腔の表面が平滑で不自然な変形がありません。分節型の胆嚢腺筋腫症では,胆嚢内腔は二房性に砂時計様変形を示します。分節型もびまん型も,多くの場合,壁内に拡張したRAS(Rokitansky-Aschoff sinus)を反映する類円形の微小無エコー域やコメット様エコーが確認されます。一方,胆嚢癌は表面不整あるいは乳頭状を呈します。内部エコーは不均一で,壁の層構造は不明瞭,壁の厚みも不均一となります。慢性胆嚢炎は,表面が比較的整で,壁の層構造が明瞭です。急性胆嚢炎では肥厚した壁内に低エコー帯を認めることが多く,炎症所見が改善するにつれて壁の肥厚が改善します。膵・胆管合流異常症では膵液が胆道内に逆流するため,胆嚢粘膜が過形成性変化を呈し,胆嚢壁の内側低エコー層が均一にびまん性に肥厚します。
胆嚢壁肥厚を指摘された場合には,胆嚢癌との鑑別が最も重要となります。US上,胆嚢腺筋腫症を強く示唆する場合には,6カ月後にUSで経過観察します。低率ながら癌を合併することがありますので,注意を要します。典型的な胆嚢腺筋腫症の所見がなければ,EUS,MDCTやMRCPなどの精査を行います。EUSは胆嚢病変の描出に優れた,外来でも施行可能な検査方法です。MDCTでは非腫瘍性病変が動脈相で漸増性に濃染されるのに対して,腫瘍性病変では強く濃染されることで鑑別できます。MRCPでは,胆嚢腺筋腫症は拡張したRASがより鮮明に描出されます。ERCPは,胆嚢胆汁細胞診による診断を要する場合に有用です。膵・胆管合流異常症の胆管非拡張型は,30~40%に胆嚢癌を合併するため胆嚢摘出術を行います。また,胆管拡張型では胆嚢癌のほか,胆管癌を合併することも少なくなく,胆嚢摘出術と胆管切除術を施行するのが一般的です。慢性胆嚢炎はMDCTの動脈相で強く濃染されないこと,胆嚢内腔側に不整像がないことで胆嚢癌と区別できます。

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