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集中治療後症候群(PICS)  【基礎疾患による病態+医療行為+環境+心的ストレスなどが作用して発症】

No.4812 (2016年07月16日発行) P.57

田村貴彦 (高知大学麻酔科学・集中治療医学)

横山正尚 (高知大学麻酔科学・集中治療医学教授)

登録日: 2016-07-16

最終更新日: 2018-11-27

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重症疾患に対する病態の理解や治療の進歩により,集中治療室(ICU)での重症患者の救命率が著しく向上している。その一方で,生還した患者の長期的なQOLや死亡率に関心が向けられるようになった。このような背景から,2012年の米国集中治療医学会において集中治療後症候群(post intensive care syndrome:PICS)という概念が提唱された(文献1)。PICSとは,ICU在室中あるいは退院後に生じる運動機能障害,認知機能障害,精神障害であり,長期予後に影響を与える病態と定義される。
PICSは患者家族に対しての精神的影響も含むものとして認識されはじめている。PICSは基礎疾患による病態に加えて,医療行為,環境,心的ストレスなどが作用して発症すると考えられているが,その詳細な分子機序に関する研究は緒に就いたばかりである。臨床においては,ICUにおける侵襲の長期予後への影響を認識し,予防する対策を講じる必要性が強調されている。
現時点におけるPICSの予防策として,日中覚醒,適切な鎮痛・鎮静薬の選択,自発呼吸トライアル,早期リハビリテーションがある。これらを実現するためには,多職種からなる医療チームで取り組む必要がある。また,2016年度版「日本版重症敗血症診療ガイドライン」にも独立した章として取り上げられることになっており,今後PICSの病態が明らかになるとともに,その対策がいっそう進むものと思われる。

【文献】


1) Needham DM, et al:Crit Care Med. 2012;40(2):502-9.

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