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術後痛と静注用アセトアミノフェン  【全身麻酔からの覚醒時間が著しく短縮したため,術後痛管理は術中から開始する】

No.4800 (2016年04月23日発行) P.52

河野 崇 (高知大学麻酔科学・集中治療医学講師)

横山正尚 (高知大学麻酔科学・集中治療医学教授)

登録日: 2016-04-23

最終更新日: 2016-10-26

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優れた術後痛管理は患者の満足度を向上させ,術後の回復を促進させる。近年,早期覚醒が可能な吸入麻酔薬であるデスフルランや超短時間作用性麻薬であるレミフェンタニルの登場により,全身麻酔からの覚醒の時間は著しく短縮した。そのため,術後痛管理は術中から開始する必要がある。
術後痛管理の基本は,オピオイド鎮痛薬に区域麻酔や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)あるいはアセトアミノフェンを併用する多角的鎮痛法である。NSAIDsやアセトアミノフェンのみでは,術後痛に対して不十分であることが多いが,オピオイドと併用することによりオピオイドの使用量を節減でき,副作用を減らすことができる。周術期では経口投与が困難であるため,静脈投与可能な鎮痛薬が用いられる。
現在,静脈投与可能なNSAIDsはフルルビプロフェンのみであるが,フルルビプロフェンの保険適用は術後の痛みであり,術中投与は保険外診療となる。一方,わが国においても,静脈投与可能なアセトアミノフェン製剤が2013年から発売され,近年,術後痛に対して標準的な鎮痛薬として頻用されている。アセトアミノフェンは,オピオイド(呼吸抑制,悪心・嘔吐,搔痒)やNSAIDs(腎毒性)と比較して重篤な副作用が少ない。このことは,特に高齢者の術後痛管理に有用である。
一方,急速に静脈内投与する必要があることから,その肝毒性に注意が必要であるが,これまでに術後痛に対する使用(成人で1回300~1000mg,1日総量4000mgまで)で大きな問題は報告されていない。

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