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急速進行性糸球体腎炎(RPGN)の生命予後の改善と透析導入の増加

No.4788 (2016年01月30日発行) P.56

山縣邦弘 (筑波大学腎臓内科教授)

登録日: 2016-01-30

最終更新日: 2016-10-26

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日本透析医学会の調査によると,日本の慢性維持透析の導入原疾患に占める急速進行性糸球体腎炎(RPGN)症例数は,2010年446名,11年483名,12年487名,13年505名と,年々増加している。わが国のRPGNの特徴は欧米と異なり,MPO-ANCA陽性のANCA関連血管炎を基礎疾患とした患者がきわめて多く,発症年齢も70~80歳代が中心である(文献1)。
このため,欧米のRPGNの治療方針,すなわち高用量の副腎皮質ホルモン製剤とシクロホスファミド(CPA)の併用という治療は,高齢者において感染症死のリスクを高めることから,日本人にそのまま適用すべきでないと考えられてきた。そこで,わが国の『エビデンスに基づく急速進行性腎炎症候群(RPGN)診療ガイドライン2014』により,中等量のステロイド単独を主体としたマイルドな治療法で初期治療を乗り切り,その後の維持治療期において,病勢のコントロールに応じてCPAなどの免疫抑制薬を使用することで,ANCA関連血管炎の生命予後は確実に改善した(文献2)。特に,高度腎機能障害を伴うANCA関連血管炎症例の生命予後が改善したことにより,経過中に透析導入リスクを持つRPGN症例が増加し,結果的に透析導入となるRPGN症例が着実に増加している。腎機能障害の効果的な治療法の開発が待たれる。

【文献】


1) Hirayama K, et al:An Update of Glomerulopathies-Clinical and Treatment Aspects. Prabhakar SS, ed. InTech, 2011.
2) Yamagata K, et al:Clin Exp Nephrol. 2012;16(4):580-8.

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