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自殺対策のための戦略研究:ACTION-J 【支援プログラムで自殺再企図を約50%防止】

No.4781 (2015年12月12日発行) P.55

岸本年史 (奈良県立医科大学精神医学教授)

登録日: 2015-12-12

最終更新日: 2016-10-26

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1998~2011年までわが国の自殺者数は3万名を超え,その数は減じたものの14年は2万5437名と交通事故死亡者数4113名の6倍強であり,国際的にもなお高い水準にある。ACTION-Jとは,厚生労働省の「自殺対策のための戦略研究」として06~11年度まで,日本医科大学,横浜市立大学,奈良県立医科大学などを中核施設として全国17医療施設で行われた「自殺企図の再発防止に対する複合的ケース・マネージメントの効果:多施設共同による無作為化比較研究」の通称である。
自殺未遂者は,再び自殺を企図し,死に至るリスクが高いため,自殺未遂者に対する支援プログラム(ケース・マネージメント)を開発し,救急医療機関に入院した自殺未遂者をケース・マネージメント介入群460名,通常介入群454名に無作為に割り付け,その効果を検証した。ケース・マネージメント介入群は通常介入群と比較して,6カ月後の時点で自殺再企図を約50%防止する有意な効果が確認された。またサブグループ解析では,この効果は,特に女性,40歳未満,過去の自殺企図歴があった自殺未遂者,により強く認められた(文献1)。
ACTION-Jでは,対象者の70%が計画通りのマネージメントを受け,高いアドヒアランスが確認された。また,ケース・マネージャーは臨床心理士やソーシャルワーカーであり,既にメディカル・スタッフとして現場に配置されているので,本研究の成果を日本の救急医療の現場に普及させることにより,自殺未遂者の自殺再企図を,そして自殺既遂を減らすことにつながるものと期待される。

【文献】


1) Kawanishi C, et al:Lancet Psychiatry. 2014;1(3):193-201.

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