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乾癬性関節炎の本態:付着部炎 【病態の理解と,増えた治療選択肢により,期待される診療転帰の向上】

No.4777 (2015年11月14日発行) P.51

池田 啓 (千葉大学アレルギー・臨床免疫学診療講師)

中島裕史 (千葉大学アレルギー・臨床免疫学教授)

登録日: 2015-11-14

最終更新日: 2016-10-26

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乾癬性関節炎(PsA)は,乾癬患者のおよそ1~3割に合併する,関節の炎症性病態である。皮膚所見が軽微または遅れて発症する場合がある。また,体軸関節よりも末梢関節の罹患頻度が高く,多関節炎を呈するため,しばしば関節リウマチ(RA)との鑑別が必要となる。
RAに対するPsAの特徴は,付着部炎(enthesitis),遠位指節間(DIP)関節の罹患,指全体のソーセージ様腫脹(指趾炎),爪病変をしばしば認め,単純X線上新規の骨形成(骨棘,enthesophyte)を認めることである(文献1)。しかし,これら多彩な特徴の多くは,解剖学的に付着部炎および,その結果として説明が可能であり,PsAの主要な病態は付着部炎と考えられている。
PsAではRA同様,TNF阻害薬が有効である。一方で近年,IL-23/Th17細胞経路の阻害は,RAへの有効性は限られるが,PsA,特にその付着部炎に対して有効性を示すことが明らかとなった(文献2)。しかし,これらの臨床試験における診察評価では末梢関節炎と付着部炎の明確な分離は困難で,また,生物学的製剤がPsAに特徴的な骨変化である骨棘形成を抑制するか否かは,これまで明らかになっていない。分子標的治療薬の選択肢が増え,画像診断の進歩で関節病態の分離が容易となることにより,PsAの病態に基づく治療選択および関節変形の予防が可能となることが期待される。

【文献】


1)Taylor W, et al:Arthritis Rheum. 2006;54(8):2665-73.
2) Helliwell P, et al:Lancet. 2015;386(9999):1114-6.

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