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虚血再灌流障害を防ぐ一酸化窒素(NO)吸入療法の可能性

No.4772 (2015年10月10日発行) P.50

木田康太郎 (東京慈恵会医科大学麻酔科講師)

登録日: 2015-10-10

最終更新日: 2016-10-26

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010年より,わが国においても一酸化窒素(nitric oxide:NO)吸入療法が,新生児の肺高血圧を伴う低酸素性呼吸不全に対する治療として,保険診療として認められることになった。従来,吸入されたNOはヘモグロビンと速やかに反応し中和されるため,その作用はNOが届いた局所に限定されると考えられてきた。しかし,最近の研究では,NO吸入は肺外の臓器においても生理活性を示し,様々な虚血再灌流障害に対して保護的に働くことが報告されている。
これまで,NO吸入が人工心肺を用いた心臓手術後の心筋障害を抑制し,左室機能障害を減らすこと(文献1)や,肝移植時の虚血再灌流障害を防ぎ,移植後の肝酵素の上昇や入院日数を減らすこと(文献2)などが報告されてきた。さらに,最近の研究でもNO吸入が移植肝の機能を改善し,移植後の肝胆道系の合併症を減らすこと(文献3)が報告されている。
NO吸入療法は,海外では10年以上にわたって臨床で行われており,安全性が確立されている治療法である。数多くの研究が示しているように,NO吸入は虚血再灌流障害の治療にも役立つ可能性があることから,今後のさらなる研究が期待される。

【文献】


1) Lang JD Jr, et al:J Clin Invest. 2007;117(9):2583-91.
2) Gianetti J, et al:J Thorac Cardiovasc Surg. 2004;127(1):44-50.
3) Lang JD Jr, et al:PLoS One. 2014;9(2):e86053.

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