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C型肝硬変に対する肝移植後のC型肝炎の治療

No.4760 (2015年07月18日発行) P.56

石崎陽一 (順天堂大学肝胆膵外科先任准教授)

川崎誠治 (順天堂大学肝胆膵外科教授)

登録日: 2015-07-18

最終更新日: 2016-10-26

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わが国における肝移植の最大の適応疾患はC型肝硬変である。肝移植後,C型肝炎ウイルスのグラフト感染はほぼ必発で,その治療は重要である。これまでは肝移植後も脾機能亢進が遷延するため白血球,血小板値の低い例が多く,インターフェロン(IFN)投与が容易ではなく,C型肝炎発症の確認後に施行するのが一般的であった。また,IFNを減量投与することが多く,sustained virological response(SVR)達成率も30~45%と低かった。
最近は日本人に多いジェノタイプ1型C型肝炎ウイルスにも有効なdirect acting antiviral agent(DAA)の開発が進み,肝移植後にも使用可能な薬剤が登場した。NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬シメプレビルは第1世代のプロテアーゼ阻害薬テラプレビルと異なり,免疫抑制薬のカルシニューリン阻害薬との相互作用がほとんどなく,肝移植後でも使用しやすい薬である。ただし,IFN+リバビリン療法との3剤併用で投与しなければならず,汎血球減少症の症例には投与しにくかった。
NS5A阻害薬ダクラタスビル塩酸塩とNS3/4Aプロテアーゼ阻害薬アスナプレビルの併用療法はIFNフリーの治療法で,カルシニューリン阻害薬との相互作用もほとんどなく,移植後でも通常量の使用が可能である。SVR達成率も高いため,今後は肝炎の発症とは関係なくC型肝硬変の肝移植後に投与される可能性もあり,画期的な治療法と言える。しかし,多剤耐性ウイルスの場合にはそのSVR達成率は低いので,これに対する奏効率も高いとされるNS5Bポリメラーゼ阻害薬ソホスブビルとNS5A阻害薬レジパスビルの配合剤の販売承認が待たれている。

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