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非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の病態解明

No.4754 (2015年06月06日発行) P.46

後藤秀実 (名古屋大学消化器内科教授)

登録日: 2015-06-06

最終更新日: 2016-10-26

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肥満者および生活習慣病が増加している中,脂肪肝が注目されている。以前は肝機能異常を指摘された場合に,脂肪肝が原因であれば食生活改善の指示で放置されることが多かった。しかし,糖尿病患者において脂肪肝がある場合は,脂肪肝がない場合に比べ脳・心血管障害のリスクが約1.3倍上昇することが報告され,生活習慣病のある人に脂肪肝がある場合はより注意が必要と言える。飲酒歴のほとんどない脂肪肝である非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)から非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)になると,ウイルス性肝炎と同様に肝硬変,肝癌に至り致命的になる。
NASHの病態に関する研究で興味深いものが2つある。NASHはNAFLDに細菌由来のエンドトキシンなどの様々な因子が加わり進行するが,腸内細菌叢由来のリポ多糖(LPS)が発がんを促進している可能性があり(文献1),腸管と肝臓との臓器相関が言われている。また,女性の閉経後のエストロゲン低下がNASHの線維化促進に関与しているとの報告(文献2)があり,中年以降の男性とともに,閉経後の女性では特にリスクが高いことを考慮してフォローする必要がある。
今後,NAFLDからNASHあるいは肝癌になる人がどのような要素を持っているか,そのバイオマーカーの開発とともに,病態が解明されることが期待される。

【文献】


1) Dapito DH, et al:Cancer Cell. 2012;21(4):504-16.
2) Yang JD, et al:Hepatology. 2014;59(4):1406-14.

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