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非小細胞肺癌の術後補助化学療法

No.4743 (2015年03月21日発行) P.56

下治正樹 (近畿大学呼吸器外科)

富沢健二 (近畿大学呼吸器外科)

光冨徹哉 (近畿大学呼吸器外科教授)

登録日: 2015-03-21

最終更新日: 2016-10-26

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非小細胞肺癌の完全切除例における再発は主に遠隔転移による。このため,再発制御を目的とした術後補助化学療法の研究が行われてきた。1995年の比較的小規模なランダム化比較試験のメタアナリシスにおいて,シスプラチン併用術後補助化学療法は5年生存率を5%改善することが示唆された。これを受けて,いくつかの大規模な第3相試験(IALT,JBR.10,ANITA)の結果が報告され,それぞれ5年生存率で4%,15%,8%の上乗せ効果を示した。さらに,2008年にはこれらを含んだ4584例を対象としたLACEメタアナリシスにおいて,5年生存率で5.4%の改善が確認された(文献1)。病期別ではⅡ/Ⅲ期において有用であったが,ⅠA期においては化学療法によってかえって死亡リスクは上昇し,ⅠB期では有意差がなかった。
一方,わが国ではⅠ期に対するテガフール・ウラシル(UFT)の有用性を評価するために,腫瘍径2cm以上のⅠ期肺腺癌999例を対象とした比較試験が行われ,UFT治療群において5年生存率で3%の改善を示した(文献2)。その後のメタアナリシスでは,2cmより小さい腫瘍における利益は明らかでなかった。このため,現在,わが国では腫瘍径2cm以上のⅠ期症例にUFT,Ⅱ/Ⅲ期症例にシスプラチン併用術後補助化学療法を推奨している。しかし,これらにより恩恵を受ける患者の割合は少なく,バイオマーカーに基づいた患者選択が急務である。

【文献】


1) Pignon JP, et al:J Clin Oncol. 2008;26(21): 3552-9.
2) Kato H, et al:N Engl J Med. 2004;350(17): 1713-21.

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