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術後認知機能障害

No.4726 (2014年11月22日発行) P.56

稲田英一 (順天堂大学麻酔科教授)

登録日: 2014-11-22

最終更新日: 2016-10-26

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近年注目されている周術期合併症に術後認知機能障害(postoperative cognitive dysfunction:POCD)がある。これは術後高次脳機能障害とも呼ばれ,記憶障害,失語,失行,失認,半側空間無視,遂行機能障害などが起こる。特に高齢者で頻度が高く,10%にも及ぶとの報告もある。心臓大血管手術や侵襲の大きな手術だけでなく,侵襲が小さな手術でもPOCDは起こると報告されている。POCDは,わずかな変化であるために診断されていないことも多いと考えられる。POCDは術後せん妄を起こした患者で発生率が高いとの報告がある(文献1)。POCDが起きた場合には,死亡率が上昇したり早期退職をするなど,本人にとっても社会にとってもマイナスの影響が大きいと報告されている(文献2)。高齢者では,灰白質や海馬の萎縮などの解剖学的変化が起こることも報告されている。POCDには,炎症反応や凝固系活性化,血小板活性化,内皮細胞障害,ミクログリア活性化,血液脳関門破綻など多くの因子が相乗的に作用している可能性がある。
POCDというものの存在を意識して患者のケアをしていくことが,患者のためにも,その家族のためにも重要である。しかし,POCDに関しては,スタンダードとなる診断基準や評価法がないことや,その変化が軽微であること,要因が術前要因,麻酔要因,手術,術後イベントなど多岐にわたることが問題である。
今後,POCDを予防するためには,評価法の確立とともに,その原因の解明が必要である。

【文献】


1) Greene NH, et al:Anesthesiology. 2009;110(4): 788-95.
2) Steinmetz J, et al:Anesthesiology. 2009;110(3): 548-55.

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