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生活習慣病と肝癌

No.4726 (2014年11月22日発行) P.52

井上泰輔 (山梨大学第一内科特任講師)

榎本信幸 (山梨大学第一内科教授)

登録日: 2014-11-22

最終更新日: 2016-10-26

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わが国における肝癌の成因は,ウイルス性が最多を占める。しかし近年,感染予防や抗ウイルス治療の進歩に伴ってC型肝炎ウイルス(HCV)由来の肝癌が減少傾向にあり,非ウイルス性肝癌が増加している。
日本肝癌研究会の追跡調査によると,1992年に77%を占めていたHCV陽性肝癌は2007年には65%と減少しており,非ウイルス性肝癌は11%から20%へと増加している(文献1)。この傾向は今後さらに強まると予想される。非ウイルス性肝癌増加の要因として,糖尿病や脂肪肝など生活習慣に基づく疾患が注目されている。
近年,わが国から糖尿病患者の死因として,悪性新生物が虚血性心疾患や脳血管障害など血管系疾患よりも高頻度であり,悪性新生物の中では肝癌が最多であったと報告されている(文献2)。同様に,生活習慣と関連して,インスリン抵抗性を有する非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)でも,肝線維化の進行に伴って肝癌合併リスクが高まるとされている(文献3)。
糖尿病やNASHにおける肝発癌機序は解明されておらず,肝癌監視スクリーニング法も確立されていないが,生活習慣病は肝癌の高リスクである,との意識を持って診療にあたる必要がある。

【文献】


1) 日本肝癌研究会:第19回全国原発性肝癌追跡調査報告(2006~2007). 2014.
2) Hotta N, et al:J Diabetes Investig. 2010;1(1-2):66-76.
3) Hashimoto E, et al:J Gastroenterol. 2009;44 (Suppl 19):89-95.

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