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進行肝癌に対する分子標的治療薬ソラフェニブ

No.4719 (2014年10月04日発行) P.52

相方 浩 (広島大学消化器・代謝内科講師)

茶山一彰 (広島大学消化器・代謝内科教授)

登録日: 2014-10-04

最終更新日: 2016-10-26

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分子標的治療薬ソラフェニブは,Raf,VEGFR,PDGFRなどの腫瘍増殖や血管新生に関わる主要なシグナル伝達経路の複数の分子を標的としたマルチキナーゼ阻害薬である。肝切除や肝動脈化学塞栓術など,既存の治療が奏効しない進行肝癌に対して,欧米(文献1)やアジアにおける大規模試験により,予後改善効果が証明された初めての全身性制癌剤であり,わが国では2009年5月に薬価収載された。
ソラフェニブの奏効率は数%にとどまるが,腫瘍の進行を抑制することでsurvival benefitを得る薬剤であり,長期の内服継続をめざす必要がある。一方,手足症候群,肝機能障害,倦怠感などの有害事象の発現頻度は高く,適切な副作用管理が必要である。これまで,新たな分子標的治療薬の開発,ソラフェニブを対照とした臨床試験が行われているが,現在のところ,ソラフェニブの成績を凌駕する結果は得られていない。
一方,既存治療である肝動脈化学塞栓術や肝動注化学療法とソラフェニブの併用や使いわけに関する臨床試験,さらに肝癌根治治療後の補助化学療法としてのソラフェニブの有効性に関する臨床試験が行われるなど,進行期にとどまらずソラフェニブの有効性が期待されている。また,治療効果や予後予測因子となるバイオマーカーとして,がん組織中FGF3/4遺伝子(文献2)や血管新生サイトカインなどが報告されているが,さらに明確な指標となるバイオマーカーの探索が行われている。

【文献】


1) Llovet JM, et al:N Engl J Med. 2008;359(4): 378-90.
2) Arao T, et al:Hepatology. 2013;57(4):1407-15.

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