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フレイルとサルコペニア

No.4711 (2014年08月09日発行) P.53

入谷 敦 (金沢医科大学高齢医学科教授)

森本茂人 (金沢医科大学高齢医学科教授)

登録日: 2014-08-09

最終更新日: 2016-10-26

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フレイルとは,加齢に伴う様々な機能的・生理的変化により生活機能障害を招きやすい状態で,食欲低下,免疫能低下,神経疾患,インスリン抵抗性,サルコペニアなどを原因として起きた移動能力の低下,筋力低下,栄養障害,活力の低下,疲労感と定義づけられている。フレイルな高齢者では恒常性を維持する機能が低下しており,施設入所,転倒,入院などをきたしやすい。
一方,サルコペニアは2010年にThe European Working Group on Sarcopenia in Older People(EWGSOP)により「筋量と筋力の進行性かつ全身性の減少に特徴づけられる症候群で,身体機能障害,QOL低下,死のリスクを伴うもの」と定められ(文献1),筋肉量減少,筋力低下,身体機能低下の3要素から構成される臨床的な診断基準が示された。2014年,The Asian Working Group for Sarcopenia(AWGS)によるアジア人独自の診断基準が定められた(文献2)。このサルコペニアの進行で転倒,歩行速度低下,活動度低下,基礎代謝低下が生じやすくなり,さらに,フレイルが進行すると要介護状態につながる可能性が高くなる。サルコペニアは高齢者の運動機能,身体機能を低下させるばかりでなく,生命予後,ADLを悪化させ,高齢者のみならず介護者のQOLを低下させることが多い。
両者ともに他の老年症候群の原因ともなり,症候重複を起こしやすく,これら老年症候群が発症すると雪だるま式に増殖し(geriatric giants),機能廃絶に至ってしまうことから,早期発見,早期介入に対する啓発が重要である。

【文献】


1) Cruz-Jentoft AJ, et al:Age Ageing. 2010;39(4): 412-23.
2) Chen LK, et al:J Am Med Dir Assoc. 2014;15(2): 95-101.

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