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自然気胸の外科

No.4697 (2014年05月03日発行) P.57

金子公一 (埼玉医科大学国際医療センター呼吸器外科教授)

登録日: 2014-05-03

最終更新日: 2016-10-26

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自然気胸の外科治療は長い間,腋窩開胸法による肺縫縮術で,肺尖部の肺嚢胞(ブラ,ブレブ)には縫縮や切除縫合が行われていた。1990年代初頭に胸腔鏡手術が急速に普及すると,手術操作が比較的容易な自動縫合器による肺尖部の肺嚢胞の切除手術が行われるようになった。胸腔鏡手術は肺癌をはじめ多くの手術で,開胸手術と同様の操作が基本原則になっているが,気胸の手術では,手術操作の簡便性から肺縫縮術に代わって肺嚢胞切除術という異なる術式で全国に普及した。
その後,10年ほど経過した段階で,手術後の気胸再発率は腋窩開胸手術1%前後に対して胸腔鏡手術5~10%あるいは10%超との高い再発率が指摘された(文献1)。しかし胸腔鏡手術を問題視することも腋窩開胸手術が顧みられることもなく,再発率低下のための工夫が展開された。再発率が高くても腋窩開胸に比べて侵襲も疼痛も少ない胸腔鏡手術が患者にとって有利であるとの認識から,エビデンスや手術成績を超えた選択がなされた。
その後,自動縫合器による肺嚢胞切除線近傍の胸膜補強の処置によって術後再発率の減少が図られることが示された(文献2,3)。胸膜補強にはフィブリン糊塗布,ポリグリコール酸(PGA)や酸化セルロース材による被覆,自己血散布,縫合による補強などを単独もしくは組み合わせて処置することで術後気胸の再発率が抑えられるとの報告である。ただし,フィブリン糊は血液製剤であることから,気胸手術での使用は減少している。

【文献】


1) Ohno K, et al:Jpn J Thorac Cardiovasc Surg. 2000;48(12):757-60.
2) 大森一光:日胸臨. 2004;63(12):1119-23.
3) 矢吹 皓, 他:胸部外科. 2013;66(12):1033-40.

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