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角膜移植の術式と具体的な適応

No.4721 (2014年10月18日発行) P.62

大口剛司 (北海道大学大学院医学研究科眼科学分野)

登録日: 2014-10-18

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

角膜混濁に対する治療として角膜移植がありますが,術式は全層角膜移植(penetrating keratoplasty:PKP)が一般的です。しかし,状況によって全層でなく,部分的に移植する術式が可能とのことです。逆に部分的な移植が可能な疾患でも,PKPが適応になる場合もあるようです。北海道大学・大口剛司先生は様々な角膜疾患の病態に応じて,どの術式を選択されていますか。
【質問者】
芝 大介 慶應義塾大学医学部眼科

【A】

角膜は上皮,ボウマン膜,実質,デスメ膜,内皮の5層からなる組織です。以前はこの5層すべてを移植するPKPが主流でしたが,術後眼球強度が低下することや拒絶反応などが問題点でした。近年,「角膜パーツ移植」という概念が広がり,角膜の悪い部分だけを移植することが可能となっています。たとえば角膜表層に混濁があり視力低下をきたしているケースでは,角膜を半層程度切除し,同様に移植角膜片を半層切除し移植したり,角膜内皮に問題があるケースでは内皮だけを移植するという方法です。
また,角膜実質の深層まで混濁が及んでいるものの内皮機能が保たれているケースでは,レシピエント側のデスメ膜のみを残しドナー側のデスメ膜を切除し移植するという,深層表層角膜移植という方法もあります。これにより低侵襲な手術が可能となり,術後管理や拒絶反応などのリスクが軽減できるようになっています。
しかし,内皮に問題があり水疱性角膜症となった場合でも長期間経過したケースでは角膜実質に瘢痕・混濁をきたしていることがあるため,また,角膜上皮障害による疼痛が主症状の場合は,PKPが選択されることもあります。
このように,角膜移植の術式を選択する場合は患者さんの病態をよく把握し,また,患者さんにその術式のメリット,デメリットをよく話した上で手術に臨んでいます。

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