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生活習慣病と肝機能異常

No.4711 (2014年08月09日発行) P.58

角田圭雄 (京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学講師)

登録日: 2014-08-09

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

生活習慣病の人の肝障害の原因,検査,対策について。また,患者指導について注意すべき点に関しても併せてお教え下さい。京都府立医科大学・角田圭雄先生に。
【質問者】
芥田憲夫:虎の門病院肝臓内科医長

【A】

原因としては,ウイルス性肝炎,自己免疫性肝炎,アルコール性肝障害などが除外できれば,最も可能性が高いのは非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD)です。腹部エコーやCTなどの画像診断で肝脂肪化の有無を評価し,飲酒量が女性20g/日,男性30g/日以下であることを確認します(文献1)。ただし,肝細胞の20~30%未満の軽度脂肪化は画像診断では検出が困難なので注意が必要です。肥満者での頻度が高いのですが,非肥満者であっても成人後に10kg以上の体重増加がある場合,NAFLDのリスクが高いことが報告されています(文献2)。
NAFLDには肝疾患関連死亡(肝癌,肝不全,食道静脈瘤破裂など)のリスクの高い非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis:NASH)が10~20%程度に存在し,肝生検によって肝細胞の風船様変性を認めればNASHと診断できます(文献1)。
注意したいのはNASHではALT低値でも線維化進行例があり,ALT値は重症度の指標とならないということです。NASHを疑う所見としては,フェリチン,空腹時インスリン,4型コラーゲン7Sが高値を示す例です(文献3) 。肝線維化の進行とともに血小板数が低下しますが,18万未満で既に高度線維化の可能性があります。AST/ALT比が0.8以上の例も高度線維化進行の可能性があります(文献4)。
最近はエラストグラフィ(フィブロスキャン)によって肝線維化や脂肪化を予測することが保険適用となっています。特に高度線維化例は肝細胞癌のリスクが高く,定期的な画像検査が必要です。
治療は食事・運動療法で7%の体重減少をめざしますが,無効の場合,抗糖尿病薬や脂質異常症治療薬を用いることもあります。糖尿病合併のないNASH症例ではビタミンEの投与が勧められています(文献5)。生活習慣病の患者さんの診察の際には常にNASHの可能性を念頭に置き,肝臓専門医と連携しながら診療を行うことをお勧めします(文献6)。

【文献】


1) 日本消化器病学会, 編:NAFLD/NASH診療ガイドライン2014. 南江堂, 2014.
2) Nishioji K, et al:J Gastroenterol. 2014 Mar 12. [Epub ahead of print]
3) Sumida Y, et al:J Gastroenterol. 2011;46(2): 257-68.
4) Sumida Y, et al:World J Gastroenterol. 2014; 20(2):475-85.
5) 岡上 武, 監:症例に学ぶNASH/NAFLDの診断と治療─臨床で役立つ症例32. 診断と治療社, 2012.
6) 中島 淳, 監:見て読んでわかるNASH/NAFLD診療─かかりつけ医と内科医のために. 診断と治療社, 2014.

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