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MSSA菌血症の治療

No.4708 (2014年07月19日発行) P.62

藤田崇宏 (東京女子医科大学病院感染症科)

登録日: 2014-07-19

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

わが国ではメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(methicillin-susceptible Staphylococcus aureus:MSSA)菌血症の治療にMSSA用ペニシリンが使用できず,セファゾリンが第一選択薬とされますが,(1)中枢神経系合併症(髄膜炎や脳膿瘍など)がある場合,(2)セファゾリンを十分量投与しても血液培養が陰性化しない場合,の治療戦略に難渋することがあります。(1)ではやむなくセフトリアキソンを選択,(2)では心内膜炎や腸腰筋膿瘍,椎体炎などの合併症を評価した上で併用療法を検討しますが,どう対応すべきでしょうか。東京女子医科大学・藤田崇宏先生に。
【質問者】
脇坂達郎:国立病院機構名古屋医療センター総合内科 医長

【A】

セファゾリンは中枢神経系への移行がないため,MSSAの菌血症に髄膜炎や脳膿瘍を合併した場合には治療薬として不適切と考えられています。わが国では中枢神経移行のある黄色ブドウ球菌用ペニシリンが入手できないため,ご質問はわが国の感染症専門医にとって,以前から頭の痛い問題です。
(1)中枢神経系合併症がある場合
専門家によって選択する薬剤が異なることが多いようです。合併した感染症の治療が必要な場合もあるので,ケースバイケースでの判断になりますが,私自身は多くの場合,最初はセフトリアキソン1回2gを1日2回(髄膜炎の際の投与量)とバンコマイシン(トラフ値を高めに保つ量で)の併用を行います。これらの薬剤を選ぶ理由としては,中枢神経感染症での治療に評価が定まっているという点が挙げられます。
状況が許せばアンピシリン・クロキサシリン配合薬(ビクシリンSR )の大量投与を行うこともあります。この製剤に含まれるクロキサシリンは,わが国で唯一入手できる黄色ブドウ球菌用ペニシリンです。アンピシリンとクロキサシリンが1:1の割合で配合されているので,1回4gを1日6回投与することで,クロキサシリンを12g投与することができます(文献1)。ただし,ペニシリン系の大量長期投与に伴う腎障害などの懸念もあるため,症例は慎重に選んだほうがよいと思われます。他の選択肢としてメロペネム,セフェピムを髄膜炎治療に準じた量で投与することもあります。
(2)菌血症の難治化
S. aureusの菌血症が難治化する原因のほとんどは抗菌薬の問題ではなく,ソースコントロールの不良です。コンサルタントとして,まずはソースの除去を担当医に依頼します。菌血症が解除できない時点ですでに「内科的治療の限界」の可能性が高いと考えられます。その上で薬剤を追加するならば,ゲンタマイシンかリファンピシン(あるいは両方)を選択します。
ゲンタマイシンは近年,ネガティブデータが出てきていますので,強い信頼が置けるわけではありませんが,菌血症の解除に少しは貢献してくれるのではないかと期待して,心内膜炎のレジメンに準じた量を併用薬として追加することがあります。リファンピシンは菌量が多い状態で使用すると,容易に耐性をとられると言われているので,追加する場合,多くは少し間隔を空けて投入します。異物の除去がどうしても困難で,長期治療に持ち込む場合には必ず併用薬として用います。

【文献】

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