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IFN治療とIFNを使用しない経口薬治療の使いわけ

No.4704 (2014年06月21日発行) P.62

芥田憲夫 (虎の門病院肝臓内科医長)

登録日: 2014-06-21

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

C型慢性肝炎に対して副作用の軽い新規経口薬の承認が期待されています。今後,インターフェロン(interferon:IFN)治療とIFNフリーの経口薬治療をどのように使いわけるとよいでしょうか。虎の門病院・芥田憲夫先生に。
【質問者】
川口 巧:久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門 講師

【A】

C型肝炎治療は,副作用の強いIFNを併用する治療から,副作用の少ない経口の直接作用型抗ウイルス薬(direct acting antiviral agents:DAAs)のみによって治療する時代を迎えようとしています。まさに転換期を迎えたC型肝炎治療において,IFN併用療法とDAAs併用療法をいかに使いこなすかが今後の重要課題となります。
DAAs併用療法は2014年6月の時点ではまだ保険適用されていないため,重要なことは現時点で肝発癌を防ぐために行える治療を怠ってはならないということです。
まずは,肝線維化進行度と年齢を考慮して,肝発癌の危険性の高い症例には可能な範囲で,今現在使用可能であるIFN併用療法を行う必要があります。具体的にはPEG-IFN/リバビリン/NS3-4Aプロテアーゼ阻害薬の3剤併用療法によってウイルス排除をめざしますが(文献1,2) ,難治例,もしくは副作用が懸念されて,3剤併用療法を行いがたい症例では,IFN少量長期療法や肝庇護療法でDAAs併用療法が使用可能になるまで肝発癌抑制を行います。
一方,肝発癌の危険性の低い症例では,DAAs併用療法まで治療待機する選択肢はあります。ただし,肝発癌の危険性がないわけではないため,治療待機する場合は肝発癌の可能性まで十分説明しておく必要があります。
NS3-4Aプロテアーゼ阻害薬/NS5A阻害薬の2剤を用いたDAAs併用療法は,わが国で治験も終了し,90%を超える高いウイルス排除率と安全性から,2014年度中の保険適用が期待されています(文献3)。問題点は,ウイルス排除できない症例からは両剤に対する耐性ウイルスが出現することです。さらに,NS5A領域のY93Hという耐性ウイルスを治療前に持つ症例ではウイルス排除率が低下します。
このようなDAAs併用療法でも難治が予測され,一方でIFN併用療法の導入も副作用面から躊躇される症例に対する治療方針が,今後の焦点となります。最終的には,個々の症例の肝発癌の危険性とウイルス排除の可能性を慎重に評価した上で,DAAs併用療法導入の時期を決定する必要があります。
C型肝炎症例の高齢化に伴って,より効果的かつ安全に治療を行うことが期待されています。DAAs併用療法も種々の薬剤の組み合わせが開発され,副作用も少なく治癒率も改善してきていますが(文献4),治療が楽になればなるほど,肝臓専門医の腕が問われる時代になったとも言えます。

【文献】


1) Akuta N, et al: Hepatology. 2010;52(2):421-9.
2) Hayashi N, et al: J Gastroenterol. 2014;49(1): 138-47.
3) Chayama K, et al:Hepatology. 2012;55(3): 742-8.
4) Lawitz E, et al: Lancet. 2014;383(9916):515-23.

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