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高齢者肺癌の術式の選択

No.4694 (2014年04月12日発行) P.65

塩野知志 (山形県立中央病院呼吸器外科副部長)

登録日: 2014-04-12

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

実地臨床において高齢者の肺癌の手術を施行する場合,通常の標準手術を選択するか,消極的な縮小手術を選択するか悩む場面があります。
山形県立中央病院・塩野知志先生はどのような基準に照らし合わせ,どのように選択されているのでしょうか。
【質問】
浦本秀隆:産業医科大学呼吸器胸部外科准教授

【A】

わが国では高齢化が顕著に進み,80歳以上の高齢者肺癌を手術することも少なくありません。肺癌の手術適応は「肺癌診療ガイドライン2013年版」上にも「手術適応の決定には,基本的な心肺機能検査をはじめ,血液・生化学所見や年齢などを総合的に評価・検討することが必要である」と述べられており,年齢のみで適応を決めることは望ましくないとされています。しかし,高齢者は併存疾患,社会的背景が多岐にわたるので,実地臨床での入念な病歴聴取,身体,検査所見,家族背景(特に家族のサポートの有無)の把握が必要です。
高齢者に特化した前向きの臨床試験はないので,高齢者であっても臨床病期ⅠまたはⅡ期非小細胞肺癌に対して通常は「肺葉以上の切除と縦隔リンパ節郭清」を行うことになります。しかし,画像所見によっては区域切除,楔状切除などのいわゆる縮小切除を選択することも可能で,高齢者の場合はその適応範囲を若干拡大することも許容されると考えられます。
また,併存疾患や身体機能低下がある場合には,積極的に縮小切除を選択することになりますが,呼吸器外科医だけでなく,多職種からの周術期のアプローチを行うことが,肺癌の治療だけでなく,術後の生活の質を落とさないことにつながります。
なお,わが国の80歳以上の高齢者肺癌の切除成績は術後合併症発生率8.4%,術後死亡率1.4%と,諸外国と比較し非常に低率であることも付け加えておきます。

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