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非小細胞肺癌患者において縦隔リンパ節転移を疑った場合の治療法選択

No.4693 (2014年04月05日発行) P.63

浦本秀隆 (産業医科大学呼吸器胸部外科准教授)

登録日: 2014-04-05

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

肺癌患者において縦隔リンパ節転移を疑った場合,治療方法に困ることがあります。手術で完全切除が可能かどうかなどを呼吸器科,放射線科などのスタッフとよく検討して,治療方針を決定するようにしていますが,症例によっては治療法の選択に非常に難渋する場面があります。産業医科大学・浦本秀隆先生はどの治療法を,どのようにして選択されていますか。
【質問】
中島由貴:埼玉県立がんセンター胸部外科医長

【A】

縦隔リンパ節転移を伴う肺癌の治療法は現在も混沌としています。まず,縦隔リンパ節転移が病理学的に証明されているかどうかが大切な指標になるので,超音波気管支鏡下リンパ節生検(endobronchial ultrasound guided transbronchial needle aspiration;EBUS-TBNA)や,時には縦隔鏡,胸腔鏡下リンパ節生検などによって,できるだけ正確な診断をつけるように努力します。その理由はCTで縦隔リンパ節腫大を認め,PETで集積があっても偽陽性のこともあるからです。
精査の結果,縦隔リンパ節転移と判断されれば,「肺癌診療ガイドライン2013年版」に記載されているように,臨床病期ⅢA期非小細胞肺癌の治療方針は呼吸器外科医を含めた集学的治療グループで検討します。
切除可能な縦隔リンパ節転移ⅢA期非小細胞肺癌に対して,「導入療法後に外科切除を行うことを考慮しても良い」(グレードC1)と記載されているように,まず技術的にかつoncologicalに切除可能かどうか検討します。そして切除可能と判断した場合は同時化学放射線治療を先行して手術に臨みます。
切除不能と判断した場合は,同時化学放射線治療になります。導入療法における薬剤の選択や放射線治療の量,範囲などは臨床試験に準ずるか,臨床試験に登録します。
判断に迷うのは当初,切除不能と判断したにもかかわらず,劇的に治療が奏効した場合です。この場合,手術を施行するメリットに関しては,現在のところほとんどエビデンスがありません。したがってcancer boardで討議した上でその旨を患者さんに十分に説明して,同意が得られた場合,手術を選択することもあります。
このように,いわゆる救済療法が成り立つかどうかは今後の検討が必要ですし,そもそも切除可能な縦隔リンパ節転移ⅢA期非小細胞肺癌に対して,導入療法後に外科切除を行って本当に患者さんに恩恵があるかどうかは,今後の臨床試験の結果を吟味する必要があります。

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