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シルマーテストによるドライアイの診断基準は?【5分計測し,試験紙の濡れた長さが5mm以下で陽性】

No.4791 (2016年02月20日発行) P.62

中尾善隆 (広島大学大学院医歯薬学総合研究科 視覚病態学)

近間泰一郎 (広島大学大学院医歯薬学総合研究科 視覚病態学准教授)

登録日: 2016-02-20

最終更新日: 2016-10-25

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【Q】

ドライアイの診断法であるシルマーテストの標準的方法と診断基準,原典をご教示下さい。 (兵庫県 M)

【A】

ドライアイとは「様々な要因による涙液および角結膜上皮の慢性疾患であり,眼不快感や視機能異常を伴う」と2006年にドライアイ研究会(文献1)により定義されています。その診断基準は,自覚症状,涙液異常,角結膜上皮障害のうち3つ該当で“確定”,2つ該当で“疑い”とされています。涙液異常の検査の1つとして,シルマーテストが用いられます。
シルマーテストは,1903年にSchirmer(文献2)により考案されました。1941年にDe Rotth(文献3)により改良が加えられ,現在の方法に至っています。現行のシルマーテストには3方法があります。第Ⅰ法は,角膜に触れないように耳側下眼瞼にシルマー試験紙を挿入します。第Ⅰ法変法は,反射性分泌量をなくすため点眼麻酔(0.4%塩酸オキシブプロカイン)下で第Ⅰ法と同様に測定を行います。第Ⅱ法は,鼻刺激シルマーテストとも呼ばれ,鼻腔粘膜を綿棒で刺激しながら反射性の涙液分泌機能を測定する方法です。
ドライアイ診断の標準的方法として,第Ⅰ法を用いた自然瞬目状態での測定が,ドライアイ研究会により推奨されています。しかし,自然瞬目状態では,瞬目回数や角膜知覚の違いにより,角結膜が受ける刺激の程度が異なり,その結果,再現性・信頼性が低下するという意見もあります(文献4)。そのため,近年では閉瞼状態で反射性分泌を促さない測定方法を選択する施設が増えてきています。用いる試験紙の種類は35mm×35mmのWhatman No.41の濾紙が一般的ですが,その挾み方などを含めた標準化はなされていません。判定法は,5分後の試験紙の濡れた長さの計測で5mm以下を陽性とする標準化がなされています。
再現性の問題として,シルマーテストは測定因子(試験紙の位置ずれ,計測中の眼球運動など),内部因子(全身投与薬や点眼薬使用の有無,眼科手術の既往など),環境因子(パソコンやスマートフォンなどの情報端末の使用頻度,コンタクトレンズ使用の有無,エアコンなどによる乾燥環境など)の影響を受けやすく,安定した測定値が得られにくいことが挙げられます。
シルマーテストは短時間で結果を出せる利便性の高い検査法です。再現性に乏しいという点に留意した上で,ドライアイ診断材料の1つとして有効に活用できます。

【文献】


1) 島﨑 潤, 他:あたらしい眼科. 2007;24(2):181-4.
2) Schirmer O:Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 1903;56:197-291.
3) De Rotth A:Am J Ophthalmol. 1941;24:20-5.
4) 石田玲子:眼プラクティス. 2009;25:44-7.

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