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膀胱萎縮になりやすい状況や疾患と予防方法

No.4745 (2015年04月04日発行) P.65

後藤百万 (名古屋大学大学院医学系研究科泌尿器科学 教授)

登録日: 2015-04-04

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

膀胱瘻により尿路管理を行うと,急速に膀胱萎縮に進行していく例を経験します。膀胱萎縮になりやすい状況,疾患と,その予防方法をご教示下さい。 (新潟県 S)

【A】

膀胱瘻は,恥骨上の下腹部から直接膀胱にアクセスして,カテーテルを留置する尿路管理法です。通常はバルーンカテーテルを留置して,カテーテルに集尿袋を接続します。骨盤骨折や外傷による尿道断裂のために尿道からの尿排出が不可能な場合,長期の尿道カテーテル留置を回避する場合などに行われます。
(1)膀胱萎縮になりやすい状況,疾患
膀胱瘻における膀胱萎縮の要因は,蓄尿が行われないため(膀胱が常に空の状態)に膀胱容量が小さくなる機能的要因(廃用萎縮)以外に,動脈硬化などによる膀胱血流の減少や感染による膀胱壁の炎症や線維化による器質的要因があります。
廃用萎縮の場合には,再度膀胱内に尿がたまるような状況になれば,通常は速やかに膀胱機能が回復し,たとえば,長期透析後の腎移植においても萎縮した膀胱機能は速やかに回復します。しかし,膀胱瘻においては長期カテーテル留置となるため,カテーテル内腔あるいはカテーテル周囲を介した細菌感染のため,膀胱粘膜・膀胱壁の慢性炎症により膀胱壁の線維化が進んで器質的膀胱萎縮に陥ります。
(2)膀胱萎縮の予防方法
留置カテーテルは2~4週間で交換しますが,カテーテル交換や抗菌薬の投与により尿路感染を回避することは不可能であるため,膀胱瘻患者において膀胱萎縮を防ぐことは困難です。
また,糖尿病,高血圧,脂質異常症などの患者では動脈硬化による膀胱虚血が起こり,膀胱の虚血は膀胱萎縮の促進要因として働きます。膀胱収縮障害などで,尿道の通過は保たれていますが,尿排出が困難な症例では,尿道留置カテーテルや膀胱瘻造設による長期カテーテル留置の状態を避け,清潔間欠導尿による排尿管理を行えば,尿貯留による膀胱の拡張と導尿・尿排出による膀胱弛緩が繰り返されること,また,尿路感染が回避できることから,膀胱萎縮を防止することができる可能性が高いと考えます。したがって,尿道通過障害がない症例では,膀胱瘻や尿道カテーテル留置を回避し,清潔間欠導尿による排尿管理を行うことが膀胱萎縮の予防方法です(文献1)。

【文献】


1) 穴澤貞夫, 他, 編:排泄リハビリテーション─理論と臨床. 中山書店, 2009. p315-7.

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