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骨粗鬆症治療薬の投与期間と治療開始基準としての骨代謝マーカー

No.4739 (2015年02月21日発行) P.66

太田博明 (国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授、山王メディカルセンター女性医療センター長)

登録日: 2015-02-21

最終更新日: 2016-10-26

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【Q】

骨粗鬆症治療薬は投与期間に目安はあるか。また,骨代謝マーカーは骨粗鬆症の治療開始の目安となりうるか。 (神奈川県 O)

【A】

骨粗鬆症の治療も,ほかの生活習慣病治療と同様に長期間の薬物療法が必要とされる。たとえば降圧薬,脂質低下薬,抗凝固薬,抗血小板薬などにおいては,終生に近い投与が必要とされている。骨粗鬆症治療薬も投与期間においては原則,それと同様と考えるべきであろう。ただ,薬剤によって投与期間に多少の違いがある。
ビスホスホネート(bisphosphonate:BP)製剤は,明確な骨折予防効果がある反面,長期投与によっていくつかの重篤な副作用が報告されてきた。そのため,米国食品医薬品局(FDA)は,2013年にすべてのBP製剤に対して,長期に継続する場合の文言を添付文書に盛り込むように指示している。
その文言とは,すなわち,BP製剤で3~5年治療を続けた後,骨折リスクを評価し,それが低下していたら治療を中断する,しかし服薬を中断した患者は定期的にその骨折リスクを再評価するというものである。
BP製剤の最たる副作用として,顎骨壊死と非定型大腿骨骨折が挙げられる。日本骨代謝学会のほか,関連5学会で組織されるビスフォスフォネート関連顎骨壊死検討委員会がまとめたポジションペーパー(文献1)には,骨粗鬆症患者に対して侵襲的歯科治療を行う場合,BP製剤の「投与期間が3年未満で,他にリスクファクターがない場合はBP製剤の休薬は原則として不要であり,適切な口腔管理を行った後に侵襲的歯科治療を行っても差し支えない」と記されている。
BP製剤の投与期間が3年以上,あるいは3年未満でもリスクファクターがある場合,処方医と歯科医で主疾患の状況,すなわち休薬したときの骨折の可能性と侵襲的歯科治療の必要性を考慮して休薬の可否を判断することになる(図1)(文献1)。
なお,抗RANKL抗体であるデノスマブの海外第Ⅲ相(FREEDOM)試験およびその延長試験が行われている。その結果,計8年間で腰椎骨密度は18.5%も増加しており,その変化率をみると10年間では20%の増加も望めるようであり,治療のゴールも見えてきている。骨密度が正常域に到達すれば,休薬は当然なされるべきである。
次に治療開始基準としての骨代謝マーカーの有用性に関してであるが,骨代謝マーカーはあくまでも,診断確定後,治療薬の選択に用いたり,治療薬が投与されていた場合の治療薬の効果判定に用いる。すなわち,骨粗鬆症の診断には用いられない。
『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版』(文献2)においても,薬物治療開始基準には骨代謝マーカーに関する事項は一切,取り上げられていない。このことは,治療するか否かの治療開始基準における骨代謝マーカーの有用性については,明らかなエビデンスが存在しないことを意味している。

【文献】


1) ビスフォスフォネート関連顎骨壊死検討委員会:ビスフォスフォネート関連顎骨壊死に対するポジションペーパー(改訂追補2012年版). 2012.
2) 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会, 編:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2011年版. ライフサイエンス出版, 2012.

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