【Q】
関節リウマチ患者にリウマチ治療薬を6~12mg,葉酸補充療法とともに投与中。
(1)継続投与することで,薬剤の蓄積投与量がその患者の臨界点に達して,急性骨髄抑制をきたすような例は,今まで報告されているか。
(2)(1)があるとすれば,葉酸投与量を増加することでこれを予防できるか。
(3)各回投与量を調整し,葉酸補充療法が行われていても,ヌクレオチドの代謝に特徴や偏りが起こることが示された臨床試験や動物実験の結果は報告されているか。
藤田保健衛生大学・吉田俊治教授に。
(兵庫県 S)
【A】
~12mgのリウマチ治療薬はメトトレキサート(MTX)のことと思われるので,それについて回答する。
(1)MTX継続投与と急性骨髄抑制の関係
累積投与量と骨髄抑制との相関に関する報告はみられない。これまでの副作用自発報告では,投与開始から3日以内に血液障害が発現した報告もあり,投与中は常に注意が必要である。
なお,肺障害については,総投与量と相関がみられないとする報告(文献1)がある。肝線維症/肝硬変については,当初,累積投与量が2~3gを超えると危険性があると言われていたが,現在では否定的とされている(文献2)。
(2)骨髄抑制予防のための葉酸補充療法
骨髄抑制の予防のための葉酸至適量の報告はないようである。
(3)MTX投与,葉酸補充療法後のヌクレオチド代謝
関節リウマチ患者にMTX投与後,活性型の葉酸(フォリン酸)を投与すると,MTXによるプリンヌクレオチド代謝物の増加が正常化するとの報告(文献3)がある。しかし,葉酸補充療法が行われたときのヌクレオチドの代謝に関する報告は見当たらなかった。
【文献】
1) Golden MR, et al:J Rheumatol. 1995;22(6): 1043-7.
2) 鈴木康夫:医のあゆみ. 2005;214(10):851-6.
3) Morgan SL, et al:Arthritis Rheum. 2004;50 (10):3104-11.