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幼児の食物アレルギーへの工夫と眼輪湿疹への対応

No.4730 (2014年12月20日発行) P.62

大矢幸弘 (国立成育医療研究センター生体防御系内科部アレルギー科医長)

登録日: 2014-12-20

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

過日,国立成育医療研究センターの大矢幸弘先生のご講演を拝聴させて頂いた。食物アレルギーの発症を抑制するためには,なるべく早期にいろいろな食物を摂取したほうがよい(免疫寛容)とのことであった。
そこで,以下について。
(1)母乳栄養児に比べて人工乳のみ,あるいは混合哺乳児のほうが,食物アレルギーの発症が少ないというデータはあるのか。さらに,母乳栄養児でも早期からときどき人工乳を与えたほうがよいか。
(2)目の周りの湿疹はどう治療されているのか。2歳以上ならプロトピック軟膏の選択も可能であるが,眼軟膏はあまり効果があるように思えない。何か良い対処法はあるか。 (群馬県 Y)

【A】

(1)母乳,人工乳,混合哺乳と食物アレルギーの発生頻度
ご質問のresearch questionに最も近い回答を提示するデータを報告した論文が1つある(文献1)。これは,イスラエルの病院で2004年6月~2006年6月に生まれた約1万3000名の乳児を対象に,前向きに調査したコホート研究であり,リクルート率は98.4%と高いため,参加者のバイアスが少ない,質の高い研究と言える。
この研究では,母親には基本的に母乳栄養を推奨し,人工乳や牛乳の摂取を開始した後,牛乳成分に起因する症状を追跡し,牛乳アレルギーの発症率を調査している。牛乳アレルギーの診断は,質問票や電話による問診の後,皮膚プリックテストとオープン経口負荷試験を行い確定している。また,検査を拒否した母親には,別の研究者がコンタクトをとり,さらに詳細な情報収集をしている。その結果,非IgE依存性の牛乳アレルギーが71名(0.5%:内36名はFPIES,21名がproctocolitis),IgE依存性の牛乳アレルギーが66名(0.5%)であった。IgE依存型牛乳アレルギー発症の危険因子は,ユダヤ人が非ユダヤ人に比して高く(P=0.02),人工乳(牛乳)摂取開始時期が遅いこと(<0.01),であった。
人工乳や牛乳を開始した時期を4つにわけ,牛乳アレルギー(IgE陽性)の発症率を調べたところ,生後14日以内に開始した群が0.05%と最も低く,105~194日までに開始した群が最も高く1.75%であった。195日以降は再び低下し,0.5%であった。母親のアレルギー体質の有無は影響を与えておらず,ユダヤ人は非ユダヤ人よりも完全母乳栄養の実行率が倍程度と高かった。
こうした結果から筆者らは,基本的に母乳栄養を推奨するが,生後早期からの人工乳(牛乳)の追加が牛乳蛋白への免疫寛容を促進するのではないかと考えている。この研究では,人工乳(牛乳)の摂取量は測定しておらず,どの程度の量が必要かは明確でない。

(2)眼輪湿疹への対応
目の周りの湿疹の治療は,ご指摘のように眼軟膏の効果は不良で,抗菌薬を含有しているが故に,かえって接触性皮膚炎を惹起することが多い。また,2歳未満の患者の湿疹にプロトピック軟膏は適応外である。
しかし,この場合の対処法は次のようにある。抗菌薬を含有しない4群のステロイド軟膏を1日に最低3回以上塗布すると数日で改善する。このとき,目に入ることを懸念して眼周囲の皮膚にしっかり塗布しない親がいるが,「目に入っても心配いらないから,ぎりぎりまで塗りなさい」と指示するのがこつである。
そして,1日当たりの回数も1回ではなく,「1日3回以上,可能なら10回でもよいです」とアドバイスする。こうすれば,3日~1週間程度で湿疹は消失し,連日塗布から離脱できる。
眼軟膏は5群の弱いステロイドであるから安全と思ってはいけない。漫然と1カ月以上塗布し,緑内障をきたしたケースもあると聞く。4群ステロイドを頻回塗布して短期間に皮疹を消失させ,その後は,隔日塗布を3クール,2日保湿剤1日ステロイドを3クール,3日保湿剤1日ステロイドを3クール,のようにプロアクティブ療法で寛解状態を維持しつつステロイドの減量を行うと副作用なくステロイドから離脱することが可能となる。

【文献】


1) Katz Y, et al:J Allergy Clin Immunol. 2010;126 (1):77-82.

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