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水痘ワクチンの投与回数

No.4713 (2014年08月23日発行) P.59

手塚宜行 (国立成育医療研究センター生体防御系内科部感染症科)

登録日: 2014-08-23

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

このたび,水痘ワクチンが定期接種に加わった。そこで,接種対象者は生後12カ月から36カ月に至るまでの者で,合計2回の皮下注をするとされている。また,平成26年度に限り生後36カ月から60カ月に至るまでの者を対象に,1回注射するとされている。
これは,生後36カ月以上は,合計1回の接種でよいという意味か。生後36カ月以前に1回目を開始とした場合,および36カ月以降に1回目を開始とした場合の投与回数について。 (兵庫県 M)

【A】

水痘ワクチン(Oka株)(文献1)が2014年10月より定期接種化され,任意接種のワクチンから定期接種のワクチンに切り替わる予定となっている。
水痘ワクチン接種者が水痘に罹患する割合は現在の国内の流行状況では6.2~12.3%と報告されている(文献2)。その原因として,ワクチン接種後に十分な抗体獲得ができなかったprimary vaccine failureか,ワクチン接種後に十分な抗体は獲得できたが時間経過とともに抗体価が減少してしまったsecondary vaccine failureの可能性がある。
このような症例は,ほとんどの場合軽症であるが,新たな感染源となる可能性がある。米国における小児の調査では水痘ワクチンを2回接種することで,10年間の追跡調査で,防御に十分と考えられる水痘特異抗体価(gpELISAでの評価)の持続が98.3%で確認され,1回接種と比較して3.3倍ワクチン接種後の水痘発症が減少すると報告されている(文献3)。
また接種開始時期により抗体陽性率,2回目の接種開始時期が異なるため,注意が必要である。
1回目の接種は生後12~15カ月が推奨されているが,この時期の接種による防御に有効であると考えられる抗体保有率(≧5 gpELISA units)は85.7%,3カ月後に2回目接種を行った後の抗体保有率は99.6%と報告されている(文献4)。13歳以上では1回目接種後の抗体保有率は72~94%,4~8週間後に2回目接種を行った場合の抗体保有率は94~99%と報告されているが,25~31%で1~11年の間に抗体価が検出感度未満になるとも報告されている(文献4)。これらの調査結果から2回目の接種は,13歳未満では1回目から3カ月以上あけて接種,13歳以上では4週間以上あけて接種することが勧められている(文献5)。
定期接種対象者は生後12カ月から36カ月未満の児,初回接種は標準的に生後12~15カ月,最低3カ月(標準的には6カ月)あけて2回目接種,平成26年度に限り生後3歳から5歳未満までの児は1回接種となっているが,上記のようにいずれの年齢においても2回接種が望ましい。水痘ワクチンの定期接種化により,低年齢でのワクチン接種が高率になると,水痘ワクチン定期接種外の年齢の幼児,学童,成人での水痘発症が問題になると予想される。今後は重症化するとされる成人,特に最重症となりうる妊婦における水痘ワクチン接種の方策が課題となるであろう。

【文献】


1) Takahashi M, et al:Lancet. 1974;2(7892):1288-90.
2) Asano Y:J Infect Dis. 1996;174(Suppl 3):S310-3.
3) Kuter B, et al:Pediatr Infect Dis J. 2004;23(2):132-7.
4) Marin M, et al:MMWR. 2007;56(RR-4):1-40.
5) Watson B:J Infect Dis. 2008;197 (Suppl 2): S143-6.

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