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肺非結核性抗酸菌症の手術適応【「外科治療の指針」に基づいて破壊性病変例,病状進行例,喀血例を手術対象とする】

No.4787 (2016年01月23日発行) P.58

山田勝雄 (国立病院機構東名古屋病院呼吸器外科医長)

登録日: 2016-01-23

最終更新日: 2016-10-25

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【Q】

肺結核患者数が減少する一方で,肺非結核性抗酸菌症の患者数は増えてきています。結核と比べると非結核性抗酸菌症は抗菌薬治療の効果が捗々しくなく,しばしば治療に難渋します。内科治療に抵抗性の症例に対しては,病勢のコントロール目的で外科治療を行うことが日米のガイドラインで推奨されています。しかし,どの症例に,どのタイミングで,どのような手術を行い,術後はどのくらい抗菌薬治療を継続すべきかについて,判断に迷う症例が多いのも事実です。
そこで以下について,国立病院機構東名古屋病院・山田勝雄先生のご教示をお願いします。先生の施設では,肺非結核性抗酸菌症の手術適応,術後の抗菌薬投与期間はどのように決められているのでしょうか。
【質問者】
白石裕治:結核予防会複十字病院呼吸器センター長

【A】

肺非結核性抗酸菌症は肺の感染性疾患であり,その治療の基本は化学療法になります。しかし,クラリスロマイシンを含む多剤併用療法にもかかわらず病状が進行する症例も少なくなく,最終的に呼吸不全にまで進展してしまう例もあります。このような状況の中で,「内科治療での限界」とされた症例に対し外科治療が併用されるようになりました。
手術適応の基準として,1998年に日本結核病学会から「非定型抗酸菌症の治療に関する見解」(文献1) が示され,2008年には同学会から「肺非結核性抗酸菌症に対する外科治療の指針」(文献2) (以下,「外科治療の指針」)が提示されました。「外科治療の指針」の内容を簡略化すると,破壊性病変例,病状進行例,喀血例を肺非結核性抗酸菌症の手術対象としており,私たちの施設でも基本的にはこれに基づいて手術適応を決めています。
破壊性病変には空洞と気管支拡張性病変があります。排菌源となり,また,たとえ排菌が停止したとしても破壊性病変が残ると再感染の機会が多くなり,アスペルギルスなど他の病原体の感染も考えられます。気管支拡張の程度がごく軽度な例を除き,肺非結核性抗酸菌症と診断がつき,破壊性病変を認める症例は手術の対象と考えてよいと思います。破壊性病変がなくても,化学療法にもかかわらず病状が一進一退を繰り返し,徐々に進行するような場合も手術の対象となります。また,病変の進行度合いにかかわらず,喀血を認め止血剤でもコントロール不良な症例も手術の適応と考えます。年齢や呼吸機能を含め手術が可能な状態であることは言うまでもありませんが,大きくわけると以上の3つが肺非結核性抗酸菌症の手術対象となります。
術後の抗菌薬投与期間についてですが,「外科治療の指針」では,「少なくとも術後1年以上が妥当」としています。私たちの施設でも,以前は1年間を基本に術後化学療法を施行していましたが,症例を重ねるうちに,手術時摘出組織の菌培養で陽性であった症例の再燃再発率が高いことに気づきました(文献3) 。以後,術後の抗菌薬投与期間に関しては,術中摘出組織の菌培養の結果が陰性例では1年間,陽性例では期間を延長し,2年間を基本として行っています。また,内服薬のほかにも,再燃・再発の予防を目的として,術前と術後の3カ月間ずつアミノグリコシドの投与も行っています。

【文献】


1) 日本結核病学会非定型抗酸菌症対策委員会:結核. 1998;73(10):599-605.
2) 日本結核病学会非結核性抗酸菌症対策委員会:結核. 2008;83(7):527-8.
3) 山田勝雄, 他:結核. 2013;88(5):469-75.

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