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間質性肺炎合併肺癌の手術適応

No.4766 (2015年08月29日発行) P.57

伊達洋至 (京都大学大学院医学研究科器官外科学講座 呼吸器外科教授)

登録日: 2015-08-29

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

間質性肺炎合併の肺癌に対する手術適応,特に術前のリスク評価と実際選択する術式に関して,京都大学・伊達洋至先生のご教示をお願いします。
【質問者】
岡田守人:広島大学原爆放射線医科学研究所腫瘍外科 教授

【A】

肺癌手術症例の約5%に間質性肺炎が合併します。その手術が困難なのは,(1)間質性肺炎自体の予後が悪い,(2)間質性肺炎に合併する肺癌は悪性度が高い,(3)術後間質性肺炎が急性増悪することがあり死亡率が高い,ためです。
日本呼吸器外科学会が約2000例の間質性肺炎合併肺癌を検討した結果,9.3%が急性増悪を発症し,その43.9%が死亡していました。多変量解析で,7つの急性増悪リスク因子(6つの術前因子と1つの手術因子)が同定されました。術前因子としては,男性,術前の急性増悪歴,シアル化糖鎖抗原KL-6>1000U/mL,%肺活量(%VC)<80%,CT上UIP(usual interstitial pneumonia)パターン,術前ステロイド使用です。手術因子としては,部分切除に比べると区域切除以上の解剖学的切除がリスク因子でした。
一方で,長期予後に関しては,部分切除は肺葉切除よりも不良でした。これは,悪性度の高い間質性肺炎合併肺癌に対して部分切除を行うと再発率が高いためと思われました。
急性増悪のリスク因子を複数有している患者さんに対しては,部分切除を行い,比較的リスクが低いと考えられる患者さんに対しては,通常の解剖学的切除を行うのがよいと思われます。個々の患者さんのリスクを客観的に評価するために,リスクスコア(文献1)を開発しましたので,ぜひご利用下さい。

【文献】


1) Sato T, et al:Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2015; 63(3):164-72.

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