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Bモードで描出困難な肝細胞癌に対するラジオ波焼灼療法

No.4752 (2015年05月23日発行) P.52

光本保英 (大阪府済生会吹田病院消化器内科部長)

登録日: 2015-05-23

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

Bモードで描出困難な肝細胞癌に対しラジオ波焼灼療法(radiofrequency ablation:RFA)を施行する場合,どのような工夫をされていますか。大阪府済生会吹田病院・光本保英先生のご教示をお願いします。
【質問者】
森口理久:京都府立医科大学大学院医学研究科 消化器内科学

【A】

Bモードで描出困難な肝細胞癌に対するRFAはreal-time virtual sonographyや造影超音波を併用することで治療が行われています。しかし,CT/MRIのリファレンス画像とBモードの2画面表示だけでは,このような肝細胞癌を解剖学的な位置関係から推定することはできても,客観的に同定することはできません。
低音圧造影超音波では,低出力のため脈管の描出能も低下し,微小肝細胞癌はエコー画像として腫瘍を持続して描出することも難しくなります。肝細胞癌をエコー画像上に描出できなければ,当然,早期濃染像を描出することも不可能となります。
後血管相では肝細胞癌は欠損像を呈し,早期濃染像に比べ描出時間が長く,たとえ標的断面に存在しなくても,プローブ操作によって欠損像を探して描出することが可能となります。しかし,高分化型肝細胞癌の場合,後血管相で淡い欠損像を呈する場合も多く,長時間を要すると低音圧でもバブル崩壊により,コントラストの低下が起こります。このため,このような腫瘍では後血管相においても,造影後,速やかにターゲットを描出する必要があります。
リファレンス画像併用下に造影超音波を行う場合も,プローブの回転や走査などで,腫瘍の存在断面からずれると,肝細胞癌を描出できずに早期濃染像や後血管相の欠損像を描出することができなくなります。このように,低音圧で描出能の低下した造影エコー時にはプローブの位置が少しずつずれてしまい,肝細胞癌存在断面を出せていないケースも多くなります。この場合,プローブの空間的位置情報をいかに再現するかが重要となります。
fusion marker機能〔東芝メディカルシステムズ:smart fusion, GEヘルスケア:volume navigation system(V-Navi), 日立アロカメディカル: real-time virtual sonography(RVS)〕とは,プローブに装着した位置センサを利用して,プローブの方向や走査部位を3次元的にリアルタイムに計算し,画像上にマーキングしたポイントを常にトラッキングし表示できる機能です。
プローブの空間的位置情報を再現するには,fusion markerを腫瘍両側にセットし,2点とも同時に最初の状態にすることで可能となります。さらに2点目を造影エコー画面上で同定しやすい解剖学的構造(たとえば横隔膜)にセットすれば,肝臓の呼吸性変動も再現できます(fusion markers two point method(文献1))。
以上の方法を用いると,Bモードで同定困難な肝細胞癌を客観的に認識できるようになりますが,造影エコーで肝細胞癌が早期濃染している時間は短いため,RFA針を誘導するには技術が必要です。また,後血管相では比較的太い血管の同定も困難なため,肝細胞癌を同定してもRFA針が血管を穿刺してしまうリスクがあります。
そこで,まず病変を認識しやすくするために,RFA針より細いPEIT(percutaneous ethanol in-jection therapy)針で穿刺し,微量のエタノールを注入しマーキングします。その後,Bモード画面でRFA針を穿刺すれば,より安全にRFAを行うことが可能となります(エタノールマーキング法)。

【文献】


1) 光本保英, 他:超音波医. 2011;38(5):585-94.

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