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国際都市の名に恥じないたばこ対策を [お茶の水だより]

No.4729 (2014年12月13日発行) P.9

登録日: 2014-12-13

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▼日本は母国よりも喫煙しやすい─。在日外国人の約6割がそう感じていることが、禁煙補助薬を製造販売するファイザー社の調査で明らかになった。喫煙しやすいと感じる場所として「飲食店」を挙げる人が多く、約8割が日本は飲食店の全面禁煙化など受動喫煙を防止する取り組みを進めるべきと指摘している。
▼受動喫煙について国は、2012年6月に閣議決定した『健康日本21(第2次)』で、飲食店での受動喫煙を10年の50.1%から22年には15%まで下げるという数値目標を示した。0%(全面禁煙化)ではない。因みに、行政機関や医療機関は22年までに0%、また、20年までに「受動喫煙のない職場」を実現するとしている。
▼新規たばこ製品への対策も求められる。1つは、昨年8月に日本たばこ産業(JT)が大阪で店頭販売を始めた「スヌース」(無煙たばこ)だ。「受動喫煙の危険性がなく通常の紙巻たばこより安全」という誤認があるとして、日本学術会議の分科会は、スヌースもニコチン依存の原因となり癌や循環器疾患を増大させると指摘。スヌースそのものや使用者の呼気から発生する有害物質を含むよう「受動喫煙」「煙」の再定義を求める緊急提言を行った。もう1つは、禁煙グッズとして普及が進む電子たばこ。厚労省の専門委員会は先月、ニコチン入りでないタイプにも発癌性物質が含まれ、「健康に影響を与える可能性がある」との見解をまとめた。副流煙はなく、紙巻きたばこより受動喫煙の害は少ないとされているが、禁煙エリアでの喫煙を認めるべきではないだろう。
▼2020年に東京オリンピック・パラリンピックを控える日本にとって、受動喫煙対策は喫緊の課題となった。国際オリンピック委員会(IOC)が「健康的なライフスタイルとスモークフリーオリンピック」を目指しWHOと合意文書を交わした10年前後から、オリンピック大会は、飲食店などサービス産業を含む屋内施設を全面禁煙とする法律・条例がある国での開催が慣例となっている。実際、屋内施設の全面禁煙化は、北京、ロンドン、ソチの条例・法律で定められており、16年リオデジャネイロ大会が予定されているブラジルでも実現するなど、国際都市の常識となりつつある。
▼たばこが日本を訪れる外国人のイメージを悪くする要因とならないよう、厚労省と東京都は関係省庁と密接に連携を取り、対策を急いでほしい。

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