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社会福祉法人の内部留保問題、正しい認識に基づいた議論を [お茶の水だより]

No.4708 (2014年07月19日発行) P.12

登録日: 2014-07-19

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▼特別養護老人ホームなどを運営する社会福祉法人のあり方を巡り議論を重ねていた厚労省検討会が6月16日、改革の方向性と論点を示す報告書をまとめた。社会福祉法人は2000年の社会福祉基礎構造改革以降、大きな見直しはされていないが、取り巻く状況は変化しており、その意義や役割を問う声は多い。検討会の議論で中心となったのは、いわゆる“内部留保”の問題だ。
▼内部留保については2011年7月、日経新聞の報道「黒字をため込む社会福祉法人」に端を発し、問題が表面化した。また、昨年5月には特養1施設平均で3.1億円の内部留保があるとした厚労省の調査結果を多くのメディアが取り上げ、社会問題化した。この場合の内部留保には貸借対照表の構造上、既に事業用資産に投下された資金も含まれてしまう。それらを除く「実在内部留保」の観点では、1施設平均1.6億円にとどまると厚労省は指摘しており、3.1億円の多寡を問うのは明らかなミスリードだ。
▼一方で、社会福祉法人も襟を正す必要がある。現状でも希望者が閲覧を求めた場合、財務諸表の公開に応じる義務はあるが、法的拘束力がなく公開率は52.4%にとどまる。報告書は「公開を義務化すべき」としているが、早期に法制化する必要があるだろう。補助金や税制優遇を受けていながら半数近くが財務諸表を公開していない現状では、内部留保に批判が集まるのも当然といえる。役員名簿・報酬などの情報公開も義務化した上で、その内部留保額が適切かどうか精査できる土壌を整備することが重要だ。
▼今年4月の診療報酬改定を巡る議論では、在宅医療の不適切事例として集合住宅等での患者紹介ビジネスが問題視され、在医総管・特医総管で大幅な引下げが行われた。このケースも一部の事例を報じた新聞記事が中医協で取り上げられ、大幅引下げを後押しする役割を果たした。特養は高齢者介護の最後の砦ともいえる存在だ。今改定における在宅医療のケースのように、適切な運営を行っている施設にまで累が及ぶようなことがあってはならない。
▼財務省の財政制度審議会は5月30日の報告書で、特養の内部留保を「巨額」と問題視した上で、介護報酬の引下げに言及した。来年4月には介護報酬改定が控え、改定に向けた議論は秋頃から本格化する。内部留保の問題は改定率を巡る議論で大きな争点となることが予想されるが、ミスリードに影響されず正しい認識の下で議論が行われることを期待したい。

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