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接種勧奨中止3年、HPVワクチンの安全性でシンポ [産婦人科感染症学会]

No.4812 (2016年07月16日発行) P.13

登録日: 2016-07-16

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接種勧奨の中止から3年以上が経過した子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)を巡り、同ワクチンの推進派と反対派の専門家が10日、都内で開かれた日本産婦人科感染症学会学術集会のシンポジウムに登壇した。
笹川寿之氏(金沢医大)は、ワクチン接種後の健康被害について、「ワクチンの『有害事象』と『副反応』は別物。かわいそうな女の子たちの症状は有害事象ではあるが、ワクチンとの関連は検証中。新聞・テレビ等が『副反応』と騒ぐことが問題」と述べ、接種勧奨の中止が続いている現状に懸念を示した。
横田俊平氏(東京医大)らが提唱する「HPVワクチン関連神経免疫異常症候群」(HANS、用語解説)については、「診断定義に該当する症状が出たら、接種の数年後でもHANSとするのは、非常に問題がある」と批判した。
一方、横田氏は、ワクチン接種後にさまざまな症状を訴える患者の診療を通じ、「亜急性の副反応があってもおかしくないと考えるようになった」と主張。HANSに含まれる頭痛、睡眠障害、光過敏などの病態形成には「視床下部の異常が考えられる」とし、(1)症状を訴える女性のSPECT検査で視床の血流低下が認められた、(2)健康なマウスにワクチンを投与すると運動障害が生じた―との国内外の報告を紹介。「医学的根拠が集まりつつある」と反論した。
フロアからの「HPVワクチンの成分、アジュバントのどこが悪いと言いたいのか」との質問には「全体に不備がある。勧奨は再開すべきでない」とした。

●がん治療ワクチン、来春にも医師主導臨床試験へ
シンポには、HPV治療ワクチンの開発に取り組む川名敬氏(東大)も登壇。川名氏は、細胞性免疫を活性化させる乳酸菌(Lactobacillus casei)に、子宮頸がんと前がん病変を引き起こすHPVの「E7がんタンパク質」の分子を発現させた経口投与ワクチンを開発。2009年には、HPV(16型)陽性の前がん病変17例に投与する自主臨床試験を実施し、有効性を確認している。
川名氏は、「筋注ワクチンより高い粘膜免疫の誘導が期待でき、有害事象はほぼない。現在、前がん病変に対する治療薬はなく、アンメットニーズに応えるワクチンになりうる。来春にも医師主導臨床試験を始めたい」と述べた。


●用語解説
【HANS】
HPVワクチン接種後に生じた疼痛性障害、生理異常、運動障害、感覚障害、自律神経障害、高次脳機能障害などを1つの症候群とみなし、横田氏らが提唱した疾患概念。診断定義上、接種と症状発現までの期間が限定されておらず、現時点では医学的根拠の欠如が指摘されている。

【記者の眼】
接種勧奨再開を巡る笹川氏、横田氏の主張はかみ合わなかったが、検診率を向上させるべきとの主張では一致がみられた。また、川名氏の治療ワクチンには「問題を突破しうる解が見えてきた」と期待の声が上がった。(F)

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