株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

変形性肘関節症[私の治療]

No.5240 (2024年09月28日発行) P.50

伊藤 宣 (倉敷中央病院整形外科主任部長)

登録日: 2024-09-27

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 変形性肘関節症は,コホート研究の結果からはX線学的な罹患率は25~55%と意外と高いが,有症状の罹患率は低く,治療を求めて受診する患者は少ない。そのほとんどは外科的治療までを希望しないが,もし手術が必要な場合にどのように対応すべきかの知識が必要な疾患である。また,尺骨神経症状などの随伴する症状についての知識も必要である。

    ▶診断のポイント

    肘関節痛と可動域制限があって,X線で変性変化があれば診断は容易である。尺骨神経症状が主訴の場合に,本疾患が原因のことがあるので注意が必要である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    症状は疼痛が主訴のことが多い。他の変形性関節症と同様,NSAIDsの外用薬や内服薬から開始し,場合によっては温熱治療などの物理療法を行ってもよい。サポーターはあまり医学的な意義はなく,保温や心理的な効果をねらう。炎症性の痛みが強い場合は,ケナコルト(トリアムシノロンアセトニド)の関節内注射が有効であるが,効果持続期間は様々である。

    本疾患は可動域制限を伴うことがきわめて多く,またその程度も比較的強い。特に伸展制限を生じやすいが,日常生活で支障が出やすいのは屈曲制限である。これを保存的治療だけで改善させることは難しいが,少なくとも可動域制限を患者本人に認識させ,可動域維持のための屈伸,回内外訓練を常日頃から行うよう指導する。

    以上の保存的治療が無効で患者が希望すれば,外科的治療を考慮する。骨棘切除や滑膜切除術などでも一定の効果が得られ,これを鏡視下でできれば術後の回復も早い。可動域制限の改善のための手術は,術前の検討がきわめて重要である。解剖学的にどの部分を切除ないし解離すべきかよく検討し,術中も手技ごとに可動域の回復を確認しながら行う。当然ながら,周囲の神経血管束との関係はよく把握して十分な注意を払う。伸展制限が強い場合は,歴史的なOuterbridge-柏木法の変法も考慮する。いずれにしても,術後のリハビリテーションがきわめて重要で,術後に積極的かつ長期間の施行を考慮すべきである。ある程度高齢であれば,人工肘関節全置換術が有効でリハビリテーションも容易である。

    本症は主訴が尺骨神経症状であることもめずらしくなく,その場合は肘部管症候群の治療に準じて行う。回復の難しい手内筋の筋萎縮が出る前に手術を勧める必要があるが,本症が原因の肘部管症候群の場合,初診時に既に重度の尺骨神経麻痺を生じていることがある。手術は尺骨神経の前方移行術を行うが,同時に肘関節の関節枝を切離するため,関節痛の軽減も期待できる。

    残り715文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    公立小浜温泉病院

    勤務形態: 常勤
    募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・整形外科 各1名
    勤務地: 長崎県雲仙市

    公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
    現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
    2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
    6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

    当病院は島原半島の二次救急医療体制の救急告示病院として救急患者を受け入れています。
    又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。

    ●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
    今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問診療、訪問看護、訪問介護体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top