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滲出性中耳炎[私の治療]

No.5232 (2024年08月03日発行) P.40

日高浩史 (関西医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座准教授)

登録日: 2024-08-02

最終更新日: 2024-07-30

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  • 滲出性中耳炎は急性炎症を伴わず中耳貯留液を認める状態であり,「鼓膜に穿孔がなく,中耳腔に貯留液をもたらし難聴の原因となるが,急性炎症症状すなわち耳痛や発熱のない中耳炎」と定義される1)。小児において就学前に90%が一度は罹患する中耳疾患であり,小児難聴の最大の原因である。言語発達,学業や行動上の問題に影響を及ぼす可能性がある1)2)
    小児滲出性中耳炎は,周辺器官の炎症病変との関連性の中でとらえるべき疾患であり,治療の対象には中耳貯留液や鼓膜の病的変化だけでなく,鼻副鼻腔などの周辺臓器の病変も含まれる。

    ▶診断のポイント

    小児滲出性中耳炎は感冒罹患時や急性中耳炎罹患後に発症する場合が約50%と多い1)。主な症状は難聴,耳閉塞感であるが,症例の多くが就学前の小児であり,正確な聴力の把握が困難な場合もある。したがって,保護者からの詳細な問診が重要である1)が,保護者が気づいていないことも多い。

    診断には顕微鏡や内視鏡を用いた鼓膜の観察が重要であるが,気密耳鏡やティンパノメトリーは,客観的な中耳貯留液の診断に有効である1)

    幼少児では聴力検査が施行困難なことも多い。診察時の聴覚印象や言語発達の観察,気密耳鏡やティンパノメトリー,画像検査などによる側頭骨乳突蜂巣の発育程度の確認などで,おおよその聴力閾値を推定する1)。そして難聴が疑われる場合は,聴性脳幹反応(ABR)を含む精密聴力検査が可能な施設への紹介を検討する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    中耳貯留液が起こす難聴を可及的早期に改善すること,鼓膜の病的変化(鼓膜緊張部もしくは鼓膜弛緩部の高度の内陥,耳小骨の破壊,鼓膜が薄くなる,鼓膜硬化症,癒着など)とその後遺症を予防することを目的に治療が行われる1)2)

    本疾患の95%は自然治癒するとされ,国内外から報告されている小児滲出性中耳炎ガイドラインでは,鼓膜の病的変化がなければ,発症から3カ月間は手術加療を行わず,経過観察が勧められている。

    このため,まずはアレルギー性鼻炎や鼻副鼻腔炎などの周辺臓器の炎症疾患があれば,それらの加療を行う。一方,2~3歳未満では,しばしば反復する急性中耳炎の関与が大きいので,この年齢では急性中耳炎としての対応を優先する。

    経過観察期間を経過しても改善しない例で,鼓膜のアテレクタシスや癒着などの病的変化が出現した場合,ならびに良聴耳の聴力が30dBを超える聴力障害を示す場合,外科的治療(鼓膜換気チューブ留置術が第一選択)が適応になると考えられる1)2)

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