【質問者】松本和幸 岡山大学病院消化器内科
【経過観察を許容するガイドラインや報告が多いが,十分な事前説明が必要である】
膵神経内分泌腫瘍は高分化型の腫瘍(pancreatic neuroendocrine tumor:PanNET)と低分化型で悪性度の高い膵神経内分泌癌に大別され,さらにPanNETはホルモン産生能の有無で機能性腫瘍と非機能性腫瘍に分類されます。PanNETは稀少疾患ですが,CTなどの診断技術の向上や疾患概念の普及から,無症状の非機能性PanNETが偶発的に見つかる頻度が増えています。PanNETは悪性腫瘍であり,切除可能病変に対しては外科手術が第一選択となります。一方で,緩徐に進行することが多い腫瘍性質や,膵臓手術の侵襲が大きいことから,サイズの小さな非機能性PanNETに対しては経過観察も選択肢に挙がります。
メモリアルスローンケタリングがんセンターから2016年に報告された研究1)では,腫瘍径3cm未満のPanNETに対して,経過観察群(104例,平均腫瘍径1.2cm)と切除群(77例,平均腫瘍径1.4cm)の臨床経過が後方視的に比較検討されました。経過観察群は切除群に比べて有意に高齢であり,経過中(平均観察期間:30カ月)に26例で様々な理由(患者希望や腫瘍増大,医師の勧め,など)で外科切除が施行されました。経過観察群では遠隔転移の出現を認めず,いずれの群においてもPanNET進行による死亡例を認めませんでした。また,最後まで経過観察された群(78例)で腫瘍径の経時的な増大を認めず,これらの結果から,小さな非機能性PanNETにおいて,まずは経過観察する方針も妥当と結論づけられています。
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