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眼窩腫瘍[私の治療]

No.5210 (2024年03月02日発行) P.39

田邉美香 (九州大学病院眼科特任講師)

登録日: 2024-03-02

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  • 眼窩腫瘍には多くの種類があり,治療方法も多彩である。最も重要なのは正確な診断であり,そのためにはCT,MRIなどの画像検査,生検や全摘出による病理組織学検査が必要である。頻度の高い疾患として,リンパ増殖性疾患では悪性リンパ腫,特発性眼窩炎症(かつて炎症性偽腫瘍と呼ばれていた),IgG4関連疾患が挙げられる。上皮性では涙腺多型腺腫,皮様囊腫,静脈奇形(海綿状血管腫),神経鞘腫などの頻度が高い1)

    ▶診断のポイント

    ①眼球突出,②内科的治療で改善しない眼瞼腫脹,③腫瘤触知,④眼球運動障害,眼球偏位,などの所見は眼窩腫瘍を疑う。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    【緊急対応を要す場合】

    ①眼球突出による閉瞼障害,②著しい視機能障害,③日単位~週単位の増悪傾向がみられる場合は,救急対応を要する。

    【診察で気をつけること】

    問診:症状のオンセット,増悪の速さを確認する。不明な場合は過去の写真も確認する。炎症性腫瘤,高悪性度腫瘍では短期間の増悪がみられる。また,炎症性腫瘤や腺様囊胞癌,神経鞘腫の一部では痛みを伴う。

    視診:明室で眼球の位置を確認する。内下方偏位であれば涙腺部,上方偏位であれば眼窩下方のように,腫瘍局在の反対側に眼球偏位が生じる。また,頭側,側方から観察し眼球突出の有無を確認する。

    触診:腫瘤が触れる場合はその硬さを確認する。リンパ増殖性疾患ではやわらかいことが多い。

    【必要な検査】
    〈血液検査〉

    血球,CRP,血沈,免疫グロブリン(IgG,IgG4),可溶性IL-2受容体,悪性リンパ腫関連項目をみる。悪性腫瘍の治療歴があれば,転移性眼窩腫瘍も念頭に腫瘍マーカーを確認する。

    〈画像検査(CT/MRI)〉

    軸位断,冠状断,矢状断の眼窩3方向の撮影をthin sliceで行う。

    CTでは腫瘍による骨変化を確認する。一般に骨破壊は悪性腫瘍でみられ,骨菲薄化は良性腫瘍による慢性的な圧迫によることが多い。

    MRIは造影しなければ必要な情報が得られないことが多い。血管系の腫瘍を疑う場合は,ダイナミックスタディも確認する。

    【確定診断】

    画像検査で類推後に,生検または腫瘍摘出手術によって病理組織で診断する。画像検査が特徴的な囊胞性疾患や血管性腫瘍は,病歴や臨床所見と併せて診断可能である。

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