近年,従来の殺細胞性抗がん剤に加えて,新たに分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬が次々に登場し,感染症という観点からもがん患者の評価や管理が複雑化しています。
このような中で,がん治療中の患者において肺のすりガラス陰影を認めて感染症内科に相談が来る症例がしばしばあります。実際にどのように対応されていますでしょうか。
がん研有明病院・武田孝一先生にご解説をお願いします。
【質問者】伊東直哉 愛知県がんセンター感染症内科部医長/ 感染制御部室長
【鑑別診断の中でも,ニューモシスチス肺炎(PJP) vs. 薬剤性肺障害の見積もりがキモです】
誌面の都合上,「固形腫瘍患者の治療中に出現した,(CT所見としての)両側びまん性すりガラス陰影」に絞って回答します。
画像所見だけ切り取れば鑑別診断は膨らみますが,実臨床では以下の2つが最終的に鑑別診断に残ることが多いと思います。
①ニューモシスチス肺炎(Pneumocystis jirovecii pneumonia:PJP)
②抗悪性腫瘍薬による薬剤性肺障害
他の疾患については,③COVID-19→検査で精度高く評価可能,かつ陰影もびまん性というよりは散在性,④サイトメガロウイルス(cytomegalovirus:CMV)肺炎→固形腫瘍領域ではかなり稀,⑤放射線性肺臓炎→通常は照射野と密接に関係,⑥がん性リンパ管症→がんの進行度や特徴的なCT所見(小葉間隔壁や気管支血管束の肥厚など)の有無をふまえて可能性を吟味,という過程を経て,適切に診断されるか,鑑別診断からふるい落とされていくことが一般的です。
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