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日医臨時代議員会 - 非懲罰性の担保については「GLで押さえていく」 [日医臨時代議員会]  

No.4706 (2014年07月05日発行) P.10

登録日: 2014-07-05

最終更新日: 2016-11-17

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【概要】29日の日医代議員会で行われた質疑では、医療事故調査制度や基金創設など、医療・介護総合確保推進法に盛り込まれた施策について執行部の姿勢を問う質問が相次いだ。

●「死産」届出は医療機関の判断で
事故調査制度を巡っては鈴木伸和氏(北海道)らが、非懲罰性をいかに担保するかについて質した。 答弁に立った笠井英夫常任理事は、「第三者機関から警察への通報は行わないことは昨年の厚労省検討部会の報告書に明記され、田村厚労相の国会答弁でも、事故調査支援センターが警察に届け出たり、行政処分の対象という形で報告書をまとめるようなことはしないと明言している」と説明。
さらに、警察が遺族から通報を受けた場合も「謙抑的な対応をする」と警察、司法当局の間で合意されているとして、新たな事故調査制度についても今後のガイドライン(GL)策定の過程で、刑事捜査より事故調査を優先するような申し合わせを行う可能性を探っていきたいとした。
一方、松原謙二副会長は、「医師が医学的判断で行った医療行為は正当業務であり、正当業務は罰しないという刑法上の違法性阻却事由が該当する」と指摘。「そうした方向をGLの中で押さえていく」との姿勢を示した。
関連でフロアの複数の代議員からは、事案発生の報告を義務づける対象に「死産」が含まれていることに対する懸念が上がり、今村定臣常任理事は、「年間1万例を越える死産を1つ1つ届け出るということは当局も全く想定していない」と説明。「法成立後に議員と折衝し、それをGL等に落とし込むことを確約している。届け出るかどうかは医療機関の判断という風にしようと思う」との考えを示した。

●基金対象事業の情報を共有
新たな基金の対象となる事業に関する松山正春氏(岡山)の質問には鈴木邦彦常任理事が、「民間医療機関や地域医師会は、高い事業主負担を求められると実質的に事業を行えなくなることが危惧される」として、負担軽減に関し厚労省を通じて都道府県に働きかけていく考えを示した。また、各都道府県医師会の基金への提案について日医に内容を送ってもらい、固有名詞を削除した上で全都道府県と情報を共有したいとして、未対応の医師会に協力を求めた。

●医療の非営利を堅持
清水信義氏(中国四国ブロック代表)は、政府の成長戦略に盛り込まれた「非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称)」に対する日医の見解を質した。
中川俊男副会長は、日医として医療の非営利の原則を堅持する考えを強調した上で、「あるべき医療法人制度改革とは、地域包括ケアシステムの中で重要な役割を担える医療機関の健全な育成支援」であるとし、この理念に基づいた改革案「統括医療法人(仮称)制度」を厚労省の検討会に提案したことを紹介。
そのポイントは、(1)統括医療法人、参加医療法人はすべて非営利法人、(2)カバーする地域は概ね地域医療ビジョンの構想区域、(3)財務内容の報告と事業報告書の開示、外部監査の義務化、④地域医師会が参加する協議会での結果の遵守─であるとして、今後さらに詳細を検討するとした。

●損税解決策、現時点での選択肢は4つ
小熊豊氏(北海道ブロック)は、来年10月に予定されている消費税率10%引上げに関して、控除対象外消費税(損税)問題の解消に向けた検討状況を質した。
答弁に立った今村聡副会長は、解決策の候補を(1)課税化しゼロ税率導入、(2)課税化し軽減税率導入、(3)非課税のまま全額還付、(4)非課税のまま一部還付─の4つに絞り込んだことを報告。三師会や各病院団体との意見調整のほか、厚労、財務両省とも会談を重ねており、最短で8月中旬、遅くとも10月上旬までに最終解決策をとりまとめた上で与党税制協議会のヒアリングに臨む方針を示した。

●在宅医療点数削減で早期対応の声
長柄均氏(九州ブロック)は、4月の改定で在宅医療の点数が不適切事例の排除を目的に大幅に削減されたことで問題が生じているとし、「次期改定を待たずに迅速に対応するよう要請してほしい」と訴えた。
中川副会長は、改定項目のうち在宅医療の影響調査を他の検証調査よりも前倒しで実施することが中医協で決まったと報告。10月に調査結果を公表するとした。日医としても地域医師会を通して正確な現状把握に努め、「地道に在宅医療に取り組んでいる先生方を全力で支える」と強調した。
佐藤和宏氏(宮城)は、看護師の月平均夜勤時間を72時間以内とする「72時間ルール」に関して、「東北など地方の看護師不足は深刻で、高額な手数料を払って業者の手を借りない限り、好待遇でも応募がない状況。減算のダメージは大きく、病棟閉鎖に追い込まれる病院もある」として全国一律の減算規定に疑問を呈した。
釜萢敏常任理事は、「東日本大震災の被災地の医療機関では、夜勤時間の上限を緩和する特例措置が9月末まで認められているが、震災前から深刻だった看護師不足に拍車がかかっている」として、「さらに打つべき手がないか中医協に諮る」との方針を示した。
関連で鈴木常任理事は、「看護師不足や業者の問題は都市部、地方を問わない課題。看護師紹介業者に頼らなくてすむよう行政に働きかけていく」と答弁した。

●塩見氏「政策判断では地方にも配慮を」 
この日の質疑では、横倉会長の会見での発言(9頁)に対し、副会長選に出馬した塩見俊次氏(奈良)が、「政府の進める医療提供体制改革は都市部ばかり見ている。都市部では是でも地方では非となる政策もある」として、日医としての政策判断の際、地方にも配慮するよう改めて求める場面もあった。


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