翼状片は扁平上皮化生を伴う重層円柱上皮と上皮化組織より構成される。上皮化組織には新生血管と線維芽細胞,リンパ球,炎症細胞の浸潤がみられる。通常は鼻側球結膜から生じるが,3%程度の割合で耳側球結膜から生じるほか,両側から生じる場合もある。片眼性も多いが,10%程度で両側に生じる。
疫学的には紫外線曝露が指摘されており,屋外労働者や溶接業従事者で有病率が高いことや,紫外線の強い九州や沖縄での有病率が高いことが報告されている。
角膜水平方向に放射状血管を伴う三角形状の白色の増殖組織が観察されれば,診断は容易である。翼状片は直乱視が生じたり,角膜中央の平坦化による遠視化をきたしたりするため,視力低下の原因となりうる。視力検査・屈折検査で乱視の程度を確認することが重要である。角膜形状解析により,初期の翼状片でも中心部まで影響を及ぼす場合,早期の手術選択となりうる。前眼部光干渉断層計(OCT)を用いて観察すると,高次不正乱視成分が上昇してきている場合もある。
有効な薬物治療はなく,経過観察か手術を選択することになる。手術を行う際は,手術方法,合併症,予後についてインフォームドコンセントを実施の上,患者による治療の選択が推奨される。
手術の適応は,瞳孔領まで進入している場合,視力低下を伴うため手術が適応となるが,瞳孔領まで達していない場合でも角膜形状解析で角膜乱視を惹起している場合は手術の適応となる。再発例では,前眼部OCTにより角膜の菲薄化の有無を評価する。
手術の合併症として,化膿性肉芽腫,眼球運動障害などがあるが,最も問題となるのは再発である。単純切除は再発率が高く選択すべきではない。結膜有茎弁移植,結膜遊離弁移植が選択される。若年齢,再発例ではマイトマイシンCの術中散布が行われることもあるが,マイトマイシンCは抗癌剤であり,強膜軟化症などの重大な合併症をきたす危険性があるため,筆者は再発例でも用いず,複数回の手術後の最後の手段として使用を考慮している。複数回の再発例や,眼球運動障害,瞼球癒着を伴う例では,羊膜移植の併用も検討される。
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