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咽頭炎・喉頭炎[私の治療]

No.5170 (2023年05月27日発行) P.49

余田敬子 (東京女子医科大学附属足立医療センター耳鼻咽喉科准教授)

登録日: 2023-05-24

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  • 咽頭炎・喉頭炎は咽頭・喉頭の粘膜やリンパ組織の炎症によって咽頭痛,嚥下痛,嗄声,咽頭違和感を訴え,上咽頭に炎症がある場合は耳症状(耳閉感・難聴)を伴いやすい。また,扁桃,鼻副鼻腔,下気道など隣接部位の炎症を併発していることが多い。
    緊急対応を要する喉頭蓋炎・扁桃周囲膿瘍や,特殊感染症(結核,梅毒,淋菌,クラミジア,マイコプラズマなど)も同様の症状を訴える場合が多いことに留意する。

    ▶診断のポイント

    症状および目視や内視鏡による咽喉頭の粘膜やリンパ濾胞の発赤・腫脹などの局所の炎症所見から診断する。咽喉頭の炎症所見が軽微で咽頭の不快感,痰からみ感,嚥下時違和感を訴える場合は,内視鏡にて鼻・副鼻腔炎に伴う後鼻漏,上咽頭炎,咽喉頭酸逆流症を示唆する披裂部の発赤・腫脹の有無をチェックする。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    原因の多くはウイルス感染であるため,睡眠,水分・食事を十分摂るなどの疲労回復と,消炎,含嗽などの対症療法が主となる。嗄声を伴う場合には,発声を控え蒸気吸入など,のどを加湿加温するよう指導する。上咽頭炎には上咽頭擦過療法,咽喉頭酸逆流症に起因する炎症が疑われる場合には漢方薬やプロトンポンプ阻害薬(PPI)を使用する。

    処方に際して,A群溶連菌(38℃以上の発熱,滲出を伴う扁桃炎,頸部リンパ節の腫脹・圧痛,関節痛,咳がない)1)などの細菌感染を疑う徴候がない限り,抗菌薬は不要である。一方,乳幼児,高齢者,易感染性の基礎疾患を有する患者では,細菌による二次感染を生じやすいため,症状悪化時の再診を促し,細菌感染の徴候を認めた場合は抗菌薬を追加する。

    咽頭炎・喉頭炎の治療に際して,漢方薬はバリエーションが豊富で,急性期・亜急性期・遷延期,がっしりした人・きゃしゃな人・高齢者・妊婦など患者の特徴,発熱・咳・嗄声など際立つ症状から適したものを選択する。小児〜青壮年者で高熱を伴う場合は,麻黄湯を用いると解熱鎮痛薬が不要となる場合が多い。

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