Cogan症候群(Cogan’s syndrome:CS)は,眼と内耳に炎症をきたす稀な自己免疫疾患であり,間質性角膜炎と前庭聴覚障害による症状を特徴とする。また,大動脈炎などの全身性血管炎をきたすこともある。CSの発症には性差はないが若年成人に多いとされる。CSの治療は眼症状,前庭聴覚症状,血管炎症状などの程度で異なるが,後2者では早期から全身性のステロイド,反応性に乏しい場合は免疫抑制薬の併用による強力な治療が必要な場合がある。
CSは希少疾患であるため診断基準や分類基準は存在せず,特徴的な眼症状と前庭聴覚症状によって診断を行う。通常,典型的CS(1945年Coganが報告)と非典型的CSに分類される1)。
典型的CSにおいては,以下の①~③を満たす。①眼症状として非梅毒性の間質性角膜炎(interstitial keratitis:IK)。活動性IKの症状として充血,羞明,視力低下,眼痛などがある。②前庭聴覚症状としてめまい,耳鳴,嘔気・嘔吐などのメニエール病様の症状や,急速に進行する感音性難聴。③前庭聴覚症状の出現は,眼症状の出現から2年以内。
非典型的CSにおいては,以下の①~③のいずれかを満たす。①IKの有無を問わない結膜炎,上強膜炎,強膜炎,脈絡膜炎,ぶどう膜炎,緑内障,網膜出血,乳頭浮腫などの眼症状と,2年以内にメニエール病様の前庭聴覚症状が出現。②典型的CSの眼症状と,2年以内にメニエール病様ではない前庭聴覚症状が出現。③典型的CSの眼症状と,前庭聴覚症状が2年以内に出現。非典型的CSでは全身性血管炎を伴うことが多いとされる。
鑑別診断としては,眼症状や前庭聴覚症状を伴うことがある疾患を考慮し,メニエール病,梅毒などの感染症,Vogt-小柳-原田病,全身性血管炎(多発血管炎性肉芽腫症,結節性多発動脈炎,高安動脈炎)などがある。
希少疾患であるため臨床試験やガイドラインはなく,症例報告やケースシリーズなどを参考にした治療を行う。眼症状には点眼治療も行うが,進行性の前庭聴覚症状や血管炎症状を伴う場合には,全身性の免疫抑制療法を行う2)。この場合,血管炎症候群に準じたステロイドやシクロホスファミド併用による寛解導入療法,続いてシクロホスファミドをアザチオプリンに変更した寛解維持療法を通常行う。前庭聴覚障害の予後は悪いことも多く,聴力を消失した場合には,蝸牛の移植などの外科的治療も考慮される。
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