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【識者の眼】「女性に対するアンコンシャスバイアスの払拭を」杉村和朗

No.5161 (2023年03月25日発行) P.63

杉村和朗 (兵庫県病院事業管理者)

登録日: 2023-03-13

最終更新日: 2023-03-13

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神戸大学本部で理事・副学長として、医学部にいるだけでは経験できない様々な業務に携わった。病院に加えて、男女共同参画、学生、危機管理、安全衛生等々を担当していた。

男女共同参画の会に、男性弁護士をお招きした。ご家族が車で会場まで送ってこられるとのことなので、お待ちしていると、一人でお見えになった。ご家族の方も同席されたら如何ですかと言うと、「シャイなので車で待っている」とのことだった。講演が済んでお見送りに行くと、待っておられたのは男性のパートナーであった。パートナーは異性だという思い込みに、自らのアンコンシャスバイアスを感じた。

日本の多くの大学、会社、役所の幹部は男性で占められている。日本全体の元気がなくなった、国際的な存在感が低下した原因は様々であろうが、極端な男性社会がもたらした弊害も大きいと考えられる。男性中心の組織が作り上げてきた独特の仕事の進め方や人間関係はOBN(old boys network)として知られているが、近年はイノベーションを阻むものとして世界的に見直す機運が高まっている。

ジェンダーギャップは、欧米では大きく変化しており、政治家や企業トップとして活躍する女性をよく目にする。私が所属している北米、欧州の学会では、幹部の30%以上を女性が占めている。組織内で女性の比率が30%を超えることによって、男性だけでは出てこない多様な意見が得られるとする考えが広まっている。世界経済フォーラムが発表した「ジェンダー・ギャップ指数2022」(146カ国を対象)では、G7のうちドイツ10位、フランス15位、英国22位、カナダ25位、米国27位、イタリア63位であり、日本は116位と圧倒的な最下位となっており、日本の特殊性が際立つ。

医学部学生のうち女性は40%を占めているが、女性の病院長や部長、大学教授はきわめて少ない。女性であることによってその能力や可能性について固定的な観念を持ち、経験、能力、可能性を正当に評価できなくなっていることが考えられる。同じ医療職でも看護師は圧倒的に女性が多く、看護部長は管理能力に長けている人が多い。病院長を経験した者として、看護部長の優劣が病院運営の成功の鍵を握っていると思っている。

親、教師、学校の動機付けによるジェンダーのステレオタイプがアンコンシャスバイアスとしてすり込まれ、ステレオタイプに合わない女性を排除している状況を改善し、女性が活躍するにはどのような支援や方策が必要かを考え実行していくことが、医療の世界にも待ったなしで望まれている。

杉村和朗(兵庫県病院事業管理者)[ジェンダーギャップ][男女共同参画]

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