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切除可能膵体尾部癌に対するEUS-FNAの是非について

No.5156 (2023年02月18日発行) P.53

木暮宏史 (日本大学医学部内科学系消化器肝臓内科学分野主任教授)

北野雅之 (和歌山県立医科大学消化器内科教授)

登録日: 2023-02-16

最終更新日: 2023-02-14

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  • 膵腫瘤に対する超音波内視鏡ガイド下穿刺吸引生検(endoscopic ultrasonography-guided fine-needle aspiration:EUS-FNA)は診断能が高く,偶発症の発生率も低いため,広く行われています。しかし,切除可能膵体尾部癌に対するEUS-FNAは,穿刺経路腫瘍細胞播種(needle tract seeding:NTS)の可能性を考慮する必要があります。
    和歌山県立医科大学・北野雅之先生に,切除可能膵体尾部癌疑いの病変に対するEUS-FNAについてご解説をお願いします。

    【質問者】木暮宏史 日本大学医学部内科学系 消化器肝臓内科学分野主任教授


    【回答】

    【術前の病理診断として欠かせない検査であるが,NTS発生のリスクを考慮する必要がある】

    EUS-FNAは,膵癌の診断における感度および特異度がともに90%以上,偶発症発生率が1.7%であり安全かつ高精度で診断できるため,2010年の保険収載以降,膵腫瘤に対する第一選択の病理診断として用いられています。最近,切除可能あるいは切除可能境界の膵癌に対する術前補助化学療法が予後改善に寄与することが報告され,化学療法前のEUS-FNAによる病理学的確証が,さらに重要視されてきています。

    一方,EUS-FNA後にNTSの症例報告が散見されるようになりました。膵癌に対するEUS-FNAが,NTSなどにより膵癌患者の予後を増悪させるかどうかについて,数多く検討されています。米国の疫学的研究,わが国の多施設共同後ろ向き研究では,膵癌術前にEUS-FNAを実施した患者と実施しなかった患者の予後を比較検討したところ,両群間でその生存期間に有意差は認めませんでした。しかし,EUS-FNA後のNTSの発生率が低いため,全体の予後に影響していない可能性があり,NTSを軽視してはならないと考えられます。

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