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RSウイルス感染症[私の治療]

No.5155 (2023年02月11日発行) P.49

笠井正志 (兵庫県立こども病院感染症内科部長)

登録日: 2023-02-11

最終更新日: 2023-02-07

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  • RSウイルス(respiratory syncytial virus:RSV)は,小児細気管支炎の原因微生物中の50~80%を占める。1歳までに75%,2歳までに95%,3歳までにほぼ100%がRSV感染症に罹患し,RSV感染症による入院患者で最も多いのは生後1~3カ月である。
    RSV感染症の重症化リスクとして,単独で最も重要な因子は年齢と併存疾患の有無である。特に,生後3カ月未満,未熟児(特に29週未満)は重症化リスクが高く,臨床上,公衆衛生上のインパクトは大きい。

    ▶診断のポイント

    診断は臨床的に行う。潜伏期間は2〜8日の範囲で,4〜6日が最も一般的である。

    【症状】

    典型的には,最初の2~4日間は鼻閉,鼻汁,微熱などのいわゆる「かぜ」症状で始まる。そのまま治癒するケースもあるが,一部発症後3~5日目頃より喘鳴,持続性咳嗽,多呼吸,呼吸努力増加,陥没呼吸,呻吟,鼻翼呼吸などの下気道炎症状をきたす。

    【検査所見】

    RSV抗原迅速検査の検査特性は,システマティックレビュー1)では感度75~80%,特異度97~98.7%とされる。RSV感染症の流行時期でなければ,検査の偽陽性が増え,流行時期では偽陰性が増える。検査の採取部位は咽頭よりも上咽頭がよい。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    特異的な治療薬はない。保護者に経過とケアの方法を丁寧に説明し,他の重症疾患や治療可能な疾患を鑑別する。RSV感染症は乳幼児に好発するため,発熱や咳・喘鳴の鑑別は広い。特に発熱では尿路感染症,肺炎,中耳炎,川崎病の鑑別,咳・喘鳴では気管支喘息の鑑別が重要である。

    支持療法としては,適切な水分補給,酸素投与,解熱薬などがある。解熱薬使用は,その適応と使い方の説明が重要である。まず発熱を心配する保護者に対しては,発熱は病原体に対する防御反応であるという説明をすること,数値そのものより,明らかに「本人が楽になる」,その結果,「眠れる」「水分摂取ができる」などのメリットが大きいと判断したときには積極的に使用してもよい,と思いやりをもって説明する。

    気道狭窄への対応は,まずは愛護的ケアが重要である。なるべく泣かさないように,眠れるように体位を工夫するなどケアの方法を説明する。上気道狭窄に対する鼻腔吸引は,鼻閉や夜間の咳が強い場合は,市販の鼻腔吸引器で吸引を試してもよい。嫌がり,大泣きする場合はむしろ不利益であるので,無理はしないことも説明する。下気道狭窄に対する治療としてのステロイド(全身性,吸入)は,コクランレビュー2)では入院率を下げることや入院期間を減らすことに関連はしないとされており,喘息などの閉塞性肺疾患を合併しない限りは,積極的には使用しない。ロイコトリエン受容体拮抗薬も同様である。

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