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水晶体偏位・脱臼[私の治療]

No.5154 (2023年02月04日発行) P.56

橋爪公平 (岩手医科大学眼科学講座特任准教授)

登録日: 2023-02-02

最終更新日: 2023-01-31

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  • どちらも水晶体の位置異常である。先天的に水晶体を支えるチン小帯が脆弱で,水晶体がずれたものを「水晶体偏位」と言い,多くは両眼性でMarfan症候群,ホモシスチン尿症などでみられる。後天的にチン小帯が脆弱になり,水晶体がずれたものを「水晶体脱臼」と言う。外傷や偽落屑症候群でみられ,外傷の場合は片眼性が多い。

    ▶診断のポイント

    細隙灯顕微鏡により水晶体の位置異常を確認できる。位置異常がない場合でも,瞬目により水晶体の動揺がある場合は脱臼が生じている。水晶体の位置は散瞳したほうが確認しやすいが,水晶体の動揺は散瞳により抑制されることもあり,注意を要する。水晶体が硝子体内に落下している場合は,仰臥位で眼底検査をすることにより,落下した水晶体を確認できる。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    水晶体偏位・脱臼に対しては,基本的に外科的治療が必要となる。脱臼した水晶体や脱出した硝子体により急性緑内障発作が生じた場合は,急激な眼圧上昇をきたすため,緊急手術を行う。また,水晶体が前房内に脱臼した場合は,角膜内皮障害をきたすため,こちらもなるべく早めの手術が望ましい。視力低下や水晶体の傾きによる単眼性複視を生じている症例では,積極的な外科的治療を行う。自覚症状に乏しく,水晶体脱臼の程度が軽度である症例では経過観察とするが,脱臼が進行してくる場合は外科的治療を行う。

    白内障手術時に予定外の水晶体脱臼に遭遇することがある。また,偽落屑症候群,外傷の既往,硝子体手術の既往がある症例で,術前の診察で水晶体脱臼が明らかでなかった症例でも,術中にチン小帯断裂や水晶体脱臼を生じることがある。その程度によって術式の変更が必要となる。

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