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声帯結節・声帯ポリープ[私の治療]

No.5153 (2023年01月28日発行) P.55

小川 真 (大阪市立総合医療センター小児耳鼻咽喉科部長)

登録日: 2023-01-26

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  • 声帯結節は,声帯膜様部の前方1/3の部分に両側対称性に生じる隆起性病変であり,声帯ポリープは,主に片側の声帯膜様部前方に生じる赤色,あるいは白色の隆起性病変である。いずれにおいても嗄声が生じ,病変の発生に音声の酷使が大きく関与している。声帯結節は,長時間の大声使用に伴って声帯粘膜に衝突・引張・剪断応力が加わって組織傷害が生じて隆起性病変が形成され,その後は発声時に両側の病変間が衝突するようになり,いっそう増大する。一方,声帯ポリープは,瞬間的に大声を発したときに声帯粘膜の血管が破綻して血腫が生じ,その創傷治癒過程が,発声時の声帯振動のために阻害されて炎症組織が遷延持続することで生じる。

    ▶診断のポイント

    両疾患ともに,硬性あるいは軟性の喉頭内視鏡を用いて声帯を観察し,病変を視認することで診断できる。ただし,極小の声帯結節は発声時にのみ出現するため,ストロボスコピーを用いなければ視認困難である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    患者に声の安静を促すために,声の衛生指導を行う。患者の日常の発声習慣について問診し,量的・質的に改善することをめざす。

    薬物療法に関しては,病変部の炎症を緩和し,創傷治癒過程を正常化するために副腎皮質ステロイドを使用する。また,基礎疾患として胃食道逆流症があると,声帯粘膜上皮が脆弱となって粘膜病変が生じやすくなり,創傷治癒過程にも悪影響が生じる。したがって,胸焼け・呑酸・おくびなどの典型的逆流症状を伴う場合,あるいは披裂間浮腫,後交連びらん,声門下浮腫などの所見を伴う場合には,胃酸分泌抑制薬を併用する。

    また,両疾患に対して,言語聴覚士による音声訓練が行われることがある。音声訓練により腹部横隔膜呼吸を習得して,腹筋群の収縮に依存して大声を出せるようになれば,声帯粘膜への負荷が減少し,病変の改善につながる。しかしながら,音声訓練を行っている施設は少ない。

    声帯結節では,結節病変の主因が浮腫性腫脹である場合,また,病変形成後1カ月以内の場合には,保存的治療の有効性は高い。しかしながら,結節病変に瘢痕,ポリープ,囊胞などを伴っている場合,病変形成から長い時間が経過している場合,声の安静を遵守できない場合には難治傾向となる。一方,声帯ポリープが,声の安静・薬物療法・音声訓練などの保存的治療により完全消失する可能性は半分にも満たない1)。したがって,患者が早期の嗄声症状改善を希望する場合には,薬物療法を行うよりも最初から喉頭微細手術を勧めるほうがよい。

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