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マイコプラズマ肺炎[私の治療]

No.5153 (2023年01月28日発行) P.52

新庄正宜 (慶應義塾大学医学部小児科学専任講師)

登録日: 2023-01-28

最終更新日: 2023-01-24

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  • 市中肺炎の代表で,肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)を原因とする。小児(学童)に多い。基礎疾患のない肺炎の原因菌として知られ,多くは入院を必要としない。一方で,神経系を含めた合併症も知られている。第一選択薬はマクロライド系薬であるが,年長児以降ではテトラサイクリン系薬,ほかにキノロン系薬が使われる。

    ▶診断のポイント

    マイコプラズマ肺炎を中心とした非定型肺炎の特徴として,①年齢は60歳未満,②基礎疾患がない,あるいは軽微,③頑固な咳嗽がある,④胸部聴診上所見が乏しい,⑤喀痰がない,あるいは迅速診断法で原因菌らしきものがない,⑥末梢血白血球数が1万/μL未満である,などがある。ペア血清での抗体価上昇(PA法など),マイコプラズマ核酸同定検査(LAMP法やQプローブ法)あるいは迅速抗原検査で診断可能である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    「診断のポイント」に示したような特徴がある場合には,当初からマイコプラズマ肺炎を疑い,マクロライド系薬を念頭に置いた抗菌治療を組み立てる。本原因菌は細胞防壁を有さないため,細胞壁合成酵素(penicillin binding proteins:PBPs)活性を選択的に阻害するβラクタム系薬(ペニシリン系薬やセファロスポリン系薬)は無効である。

    近年では,14.3%(2018年),11.3%(2019~20年)程度であるマクロライド耐性マイコプラズマ(macrolide-resistant M. pneumoniae:MRMP)に対しては,小児ではトスフロキサシン(乳児を除く)やミノサイクリン(一過性骨発育不全,歯牙着色,エナメル質形成不全の副反応があるため,8歳以上のみ),成人ではミノサイクリンもしくはキノロン系薬が選択肢となる。MRMPを含めた最近の臨床分離株においても,これらの抗菌薬の耐性株は検出されていない。

    キノロン系薬の薬剤耐性(antimicrobial resistance:AMR)の観点からは,肺炎球菌やその他の市中肺炎の原因となる菌のキノロン耐性化,グラム陰性桿菌などを標的としない常在細菌叢の薬剤耐性化を防止するため,少なくとも若年者のマイコプラズマ肺炎に対し,初期からのキノロン系薬の使用は避ける。なお,マクロライド系薬投与後48~72時間で解熱しなければ,MRMPを疑う。代替薬でも解熱しない場合には,LDHなどを参考に高サイトカイン血症を疑う。

    マイコプラズマ肺炎の治療期間は,expert opinionとして7~10日(アジスロマイシンは3日間)が妥当である。

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